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コラム

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心理的柔軟性

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ 〜① 思考と距離を取る〜

心理的柔軟性 脱フュージョン

前回のコラムでは、心理的柔軟性を高めるためのアプローチとして、マインドフルネスを活用したACTという手法を取り上げました。今回のコラムから数回に渡って、具体的なACTの6つの考え方をご紹介します。本コラムでは、「思考と距離をとる」を取り上げます。

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ

ACTを実践し心理的柔軟性が高まると、セルフマネジメントレジリエンスが高まります。現実に対して自分の心を完全に開き、今ここで起こっていることの現実を認めることができるようになり、より価値のあることに対して有効にエネルギーを活用することができるようになります。また、心の中で起こっている葛藤や抑圧を解き放ち、受け入れることができるようになり、無駄にエネルギーを消耗しなくなります。心の中にしなやかさが生まれ、心理的柔軟性が育まれ、相手の立場に立って考えたり、新しい対応方法を思いつくことができるようになっていきます。

ACTでは、心理的柔軟性を高めるために以下の6つのアプローチを用意しています。

  1. 思考と距離を取る(脱フュージョン)
  2. 感情の居場所を作る(受容)
  3. 今この瞬間につながる
  4. 観察する自己につながる
  5. 価値を明確にし価値につながる
  6. 効果的な行動を起こす

ACT

ACTは、Acceptance Comittment Training(Therapy)の略で、行動心理学の科学研究に基づいたモデルです。ACTでは、受容と行動を重視します。解決可能なことと解決不可能なことを見分け、解決不可能なことを受け入れ、解決可能なことに力を注ぎ有効な行動を起こすことを目指します。上記1-4は、Acceptanceのパートで、マインドフルネスの手法を活用します。上記5と6は、Comittmentのパートで、価値と結びついた効果的な行動を取ることをトレーニングします。

これら6つの要素がそれぞれ協力しあって、健全なものの見方を育んでいきます。心理的柔軟性が高まっていくほど、ネガティブな思考や不快な感情にうまく対処することができるようになります。以前のコラムで取り上げた心理的安全性を高めるためにマネージャーができる3つのこと「仕事をリフレーミングする」「自分も間違えることを認める」「好奇心を持つ」にもつながり、チーム内の不安心理が鎮まり心理的安全性が生まれやすくなっていきます。

1. 思考と距離を取る(脱フュージョン)

「思考と距離を取る」とは、思考と新たな関係を築くことです。普段、仕事や生活の中で、ふと気づくと考え事をしていることがあります。考え事の中には、役に立つ考えもあれば、役に立たない考えもあります。「有効性」を軸に考え事を分類してみましょう。

例えば、

「異業種に転職しよう」
「結婚のプロポーズをしよう」
「新規プロジェクトへの先行投資をするかどうか」
「次期幹部候補は誰が相応しいか」

人生を左右する決断や仕事の重要な計画や意思決定などは、考えるに十分値する役に立つ考えでしょう。制限時間内にじっくりと熟考し、感情に気づきながら論理的に検討し、ときに人に相談し、結論を導き決断し、責任を取って実行していくことが大切です。

「あいつにはできないだろう」
「自分が正しくてあいつは間違っている」
「あの人は私の言うことを聞かない」
「あんな失敗をするなんて自分は本当に無能だ」
「こんな案件、自分には絶対無理だ」

相手に対する決めつけや攻撃的な考え、自己正当化、厳しい自己批判や自分の限界を作り出す思い込み、過去の失敗に対する反芻思考などは、エネルギーを無駄に消耗する役に立たない考えになるでしょう。

フュージョン

役に立たない考えの中には、一方的な思い込みや無意識的な偏見が含まれているにも関わらずそのことに気づかずに、自分の思考が正しいものだと認識して、思考と距離がうまく取れないために、思考と自分が一体化(フュージョン)してしまうことがあります。そうすると、部下とのコミュニケーションで上司が衝動的な発言をしてしまい、部下は萎縮して何も言えなくなってしまうことがあります。また、部下や周囲のチームメンバーは上司の反応を不快に感じてネガティブな思考に陥り必要以上にチーム内に不安が充満して心理的安全性が脅かされるようなことが起こります。

心の物語

役に立たない思考なのに、私たちは一生懸命そのことを考えてしまうことがあります。これらの思考にはまってしまうと心理的柔軟性は奪われ、質の高いコミュニケーションを難しくし、明晰な判断を鈍らせます。これらの役に立たない思考は心が勝手に作り出す物語です。この物語を私たちは吟味することなく、まるで全て正しいことのように捉え、その物語を中心に行動を起こすために、周囲とギクシャクした関係に陥ったり、自分が望む目的や目標から遠ざかってしまうことがあります。ではどうすれば良いのでしょうか。

気づき観察する

心理的柔軟性を育むためには、まず気づき、次に観察することが大切です。役にたない思考は単なる言葉の羅列であることに気づき、心が作り出した物語であることに気づき「思考と距離を取る(脱フュージョン)」ことが必要です。気づき、観察するには、マインドフルネスの実践が有効です。これらの思考を取り除こうと抵抗するのではなく、マインドフルにあるがままに観察してそれらの存在を認め、それらと平和的な関係を結ぶのです。このとき、思考が真実かどうかは重視しません。その思考が自分の望む目的を実現する行動に結びつき役に立つかどうか「有効性」に注目しましょう。

まとめ

「思考と距離を取る」ことができるようになると、役に立たない思考プロセスから解放され、時間やエネルギー、注意力を無駄に消耗することなく、もっと有益なことに向けられるようになります。「仕事をリフレーミングする」「自分も間違えることを認める」ことがより柔軟に行うことができるようになり、心理的安全性につながっていきます。「思考と距離を取る」には、「気づく」「観察する」「受け入れる」などマインドフルネスで培う心のスキルが必要です。集中瞑想や観察瞑想などのマインドフルネスの実践により、気づく力や観察する力が育まれ「思考と距離を取る」ことができるようになっていきます。次回のコラムでは、「不快な感情に居場所を作る」を取り上げます。

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