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メソッド

Method

マインドフルネス

mindfulness

マインドフルネスは、今この瞬間に、心・体・周囲で起こっていることに気づいていることです。 意図を持って「注意を払う」「観察する」「思い起こす」などの精神的な行為によって、今この瞬間に起こっていることに気づき、現実をあるがままに受け入れることです。

マインドフルネスとは

  • 今、この瞬間に好奇心を持って注意を払う
  • 評価や判断をしないで、目の前で起こっていることをあるがままに観察する
  • 自分の心と体の状態に気づく
  • 周囲の人の心や環境の状態に気づく
  • 現実をあるがままに受け入れる

様々な効果が期待されます。

マインドフルネスの実践は、脳をトレーニングすることになり、個人のパフォーマンスを高めるだけでなく、対人関係やリーダーシップに対しても好影響をもたらします。

  • 物事を行う時の集中力が高まり、優れたパフォーマンスを引き出すことができるようになります。
  • 今この瞬間に大切なことが何かを判断する優先順位付けが上手になることで、より生産的により効率的に行動をすることができるようになります。
  • 自己管理能力が高まり、ネガティブな感情が発生した時に、衝動的な感情の反応ではなく、意識的に冷静な対応をすることができるようになります。
  • 共感力が高まり思慮深いコミュニケーションを通じて、建設的な人間関係を築くことができるようになります。
  • 洞察力が高まり思いやりが深まり、オーセンティックで信頼感のあるリーダーシップを発揮することができるようになります。
  • 自己認識が深まり、建設的で活気のあるチームビルディング公平な意思決定を行うことができるようになります。
  • 心と体の状態に気づき、ストレスマネジメント感情マネジメントができるようになります。

様々な実践方法があります。

マインドフルネスは、「心の筋トレ」と表現されます。克服したい課題や目的に応じていくつかの方法を組み合わせることで、より効果的に成果をあげることが期待されます。マインドフルネスの実践により効果を得るためには、ファシリテーターが課題や目的の本質を理解した上で適切な指導をすることや最適な方法を選択すること、参加者が継続的に実践をしていくことが重要です。

(実践方法の一例)

呼吸のワーク
体の状態を観察するボディスキャン
レジリエンスを高めるワーク 心の状態を観察するインナースキャン
感情を受け入れるワーク 思いやりを育むワーク
アンガーマネジメント
共感力を高めるワーク
セルフコンパッション
価値観に気づくジャーナリング
リフレーミング 緩やかな動きを取り入れたヨガエクササイズ

 

マインドフルネスプロジェクトでは、マインドフルネスを「つながること」と解釈します。

心・体・周囲で起こっていることに気づくことで、自分とつながり、相手とつながり、会社とつながり、社会とつながります。

  • 自分とつながることは、自分自身の感情や思考に気づくことにつながり、人生の目的に沿って自分の行動を巧みにナビゲートすることが可能となります。
  • 相手とつながることは、相手のことをよりよく理解し、相手の立場に立って考えることにつながり、コミュニケーションが円滑になります。
  • 会社とつながることは、仕事に対するやり甲斐や自分のミッションを見出すことにつながり、会社のビジョン実現のために主体的に貢献するようになります。
  • 社会とつながることは、自分の居場所や生き甲斐を見出すことにつながり、思いやりや優しさを分かち合い利他的な活動をするようになります。

 

マインドワンダリング

私たちは、不確実な将来への不安を抱えながらも、常にマルチタスクをこなすことが求められる日常の中で暮らしています。ワークライフバランスを保つのが難しい労働環境、複雑な人間関係、SNSで常時オンライン接続しているプライベート、家事や育児など、ToDoリストが「やらなくてはならないこと」で埋め尽くされていき、私たちは、息をつく間も無く、次から次へと流れ作業のように業務やイベントをこなし、時間と労力を消耗していきます。

このような日常生活が常態化していくと、体と心が離れ離れになってしまい、「心ここにあらず」の状態になり、「今この瞬間」を疎かにすることになってしまいます。体は家でテレビを見ているのに、心は職場に置いてきたままであったり、会社の会議に参加しているのに、心では家族のことに思いを馳せたり、「今この瞬間」に心と体が同時に存在していないという経験は誰もが経験することではないでしょうか。

このように「今この瞬間」に注意が向けられず、心が彷徨っている状態はマインドワンダリングと表現されます。マインドワンダリングな状態で仕事に取り掛かっても、集中力が欠落し期待通りのパフォーマンスが発揮されず、生産性が低下するリスクが高まります。また、ストレスが蓄積し、肩こりや頭痛、疲労感、不眠等の身体症状が現れ、心身の健康のバランスが崩れてしまう恐れがあります。それが原因でがん、糖尿病、心臓病、精神疾患などの病気になるリスクが高まります。

厚生労働省の調査では、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.0%(2018年,※1)となっています。また、ハーバード大学心理学者の調査結果では、1日のうち、46.9%の時間がマインドワンダリングであるという報告(2010年,※2)があり、1日の約半分は「今この瞬間」に注意を向けられていないということになります。

それでは、マインドフルな状態とはどのような状態でしょうか。マインドフルな状態とは、「今この瞬間」に注意を向けることができ、目覚めている状態であり、心と体が同時に同じ場所に存在している状態です。程よい緊張と程よいリラックスの中間ぐらいの状態で、穏やかでクリアな安定感のある心の状態です。

例えば、チューニングされたギターの弦のような状態です。ギターの弦をチューニングしていく時に、弦をきつく巻き過ぎれば弦は切れてしまい、弦を緩めすぎては音程が合わず音楽を奏でることができないように、いわば、心と体が適度にバランスよくチューニングされた状態です。マインドフルな状態であれば、「今この瞬間」に持っている力を最大限活用することができ、優れたビジネスパフォーマンスを発揮することができます。目の前のタスクに集中して生産性や効率性が高まり、感情的にならず冷静な判断をすることで明晰な意思決定が可能になります。共感力や洞察力を駆使することができるようになり円滑なコミュニケーションを通じて建設的な人間関係を築き、相互理解の下に信頼関係が生まれリーダーシップを発揮することが可能になります。

※1)労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況
※2) Wandering mind not a happy mind(ハーバード大学 心理学者 マシュー・キリングワース,ダニエル・ギルバート)

マインドフルネスに関する調査報告

ダボス会議

下記の表は、世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)が2020年(4月〜6月)に「就業者が重点的に訓練を受けたスキルTop10」を調査した結果(The Future of Jobs Report 2020年10月)です。2019年はテクノロジー関連のスキルが中心だったのに対し、2020年は自己管理のスキルが中心となっています。第4位がマインドフルネス、第5位が瞑想となっています。コロナ禍による健康、メンタルヘルスに対する需要が増えたためと考えられています。第5位は感謝、第6位は優しさとEIのスキルが続いています。

ラトガース大学とウィスコンシン大学

ダニエル・ゴールマン(ラトガース大学、ディレクター)と脳神経学者のリチャード・デビッドソン(ウィスコンシン大学マディソン校教授)の調査では、マインドフルネスに関する数千の論文のうち、最も信頼できる基準に適合した論文1%から明らかになったマインドフルネスのメリットを4つあげています(※1)。より強い集中力、ストレス下での平静の維持、記憶力の向上、よいコーポレート・シチズンシップの4つです。

集中力の強化:日常的な習慣としてマインドフルネスを実践する人たちには、上の空になったり、注意散漫になったりする傾向があまり見られない。このタイプの人は、マルチタスクをこなしているときでさえ、集中力が相対的に高かった。そのビジネス効果は歴然であり、生産性の向上と概念ギャップの改善が明らかに見られる。

ストレスのある状況で比較的平静を維持:瞑想を実践する人たちの扁桃体は攻撃性が比較的弱いことが、研究によって明らかになっている。つまり、彼らの脳はある種のインプットを脅威と解釈する可能性が低く、逃走や闘争、凍結といった防衛反応を即座に示す傾向が比較的弱いのだ。チーム内の関係は良好になり、些細な対立にそれほど強く反応しなくなった。そのため、チームメンバーたちは情報やアイデアを以前よりも円滑に共有できるようになる。それぞれの異なる視点を落ち着いて討論できるため、最終的にはより有効な戦略的決定を下せる。

記憶力の向上:マインドフルネスを実践する人は、作業記憶(ワーキングメモリー)、つまり進行中の思考プロセスを保持する短期記憶にも優れている。複合思考能力の強化につながる。この能力は戦略的な仕事や問題解決、さらには他者との張り詰めたやり取りに必要な、リーダーの資質だ。また、扁桃体が興奮しにくいということは、リーダーが平静を維持できるということであり、それはすなわち明瞭さを保つことを意味する。

よいコーポレート・シチズンシップ:親切な態度を意識して育む瞑想は、マインドフルネス実践の一部であることが多い。このアプローチは、思いやりを司る脳の神経回路の活性化、つまり寛容さの増大につながり、困っている人を助ける傾向が強くなることが実証されている。これはまさに、よいコーポレート・シチズンの資質であり、また「あの人の部下になりたい」と思われるリーダーの資質だ。

(※1)2017.11.08 HBR 「マインドフルネスは4つの確かな成果をもたらす」

厚生労働省

日本の厚生労働省は、瞑想について、NIH(米国国立衛生研究所)のホームページを紹介しています。NIHは、瞑想について以下のような記述をしています。

  • 高血圧、精神障害、痛みなど様々な症状に対して瞑想がどのように役立つかを調べるために多くの調査が行われている。
  • 瞑想がどのように役立つか、またどのように脳に影響を及ぼすかが多くの調査結果から分かってきている。
  • いくつもの調査では、瞑想によって、血圧、過敏性腸症候群、不安、うつ、不眠症の症状が和らいだことを示唆されている。

国際連合

国際連合では、国連職員向けに心身の健康について、ガイドラインを発表しています。ガイドラインには、不安な時の対処方法が9つ紹介され、マインドフルネスの実践とコンパッションの姿勢が含まれています。

(不安な時の対処方法)
・ 視野を広く保つこと
・ 事実を取ること
・ 子供とコミュニケーションを図ること
・ 基本的な健康方法を思い出すこと
・ 仕事と生活のバランスを保つこと
・ 創造的にテクノロジーを使って定期的に友達や家族と連絡を取り合うこと
・ マインドフルネスを実践すること
・ メディアのニュース、特にテレビのニュースに触れる機会を制限し、代わりに新聞を読むこと
・ 逆境に対する良い対抗策は、優しさとコンパッションである

研究事例詳細

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ハーバード大学心理学者 マット・キリングワース TED講演(日本語字幕選択できます)

人が最も幸福を感じるのはいつでしょうか?この問についてデータを収集するために、マット・キリングワースは幸福度追跡装置(Track Your Happiness)というアプリを開発し、被験者にリアルタイムの幸福度を報告してもらいました。驚きの結果がでました。幸福度が一番高かったのは目の前のことに没頭しているときでした。反対に気が散っている時は幸福度が低くなりました。(2011年11月)