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コラム

Column

心理的安全性

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ 〜③ 今この瞬間に集中し完全につながる 〜

心理的柔軟性

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ、今回は、「3. 今この瞬間に集中し完全につながる」を取り上げます。「3. 今この瞬間に集中し完全につながる」ことは、マインドフルネスの考え方の中心です。前回までに取り上げた「1.思考と距離を取る」「2.感情に居場所を作る」にも関わってきます。

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ

ACTを実践し心理的柔軟性が高まると、セルフマネジメントレジリエンスが高まります。現実に対して自分の心を完全に開き、今ここで起こっていることの現実を認めることができるようになり、より価値のあることに対して有効にエネルギーを活用することができるようになります。また、心の中で起こっている葛藤や抑圧を解き放ち、受け入れることができるようになり、無駄にエネルギーを消耗しなくなります。心の中にしなやかさが生まれ、心理的柔軟性が育まれ、相手の立場に立って考えたり、新しい対応方法を思いつくことができるようになっていきます。

ACTでは、心理的柔軟性を高めるために以下の6つのアプローチを用意しています。

  1. 思考と距離を取る(脱フュージョン)
  2. 感情の居場所を作る(受容)
  3. 今この瞬間につながる
  4. 観察する自己につながる
  5. 価値を明確にし価値につながる
  6. 効果的な行動を起こす

「3.今この瞬間に集中し完全につながる」とは

「3.今この瞬間に集中し完全につながる」とは、今この瞬間、この場所で起こっていることに気づくことです。過去についてくよくよ考えたり未来の心配をせず、今行っていること、経験していることに完全に集中し、現在の瞬間に完全に浸りきることです。評価や判断をすることなく、物事をあるがままに見て、現実に抵抗しようとしません。過去や未来のことを考えているときには、思考する自己が働き、今この瞬間を経験していない状態になります。「3.今この瞬間に集中し完全につながる」には、思考する自己ではなく、観察する自己が現実をありのままに見ます。「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことができていないとどんなことが起こるでしょうか。1つの事例を見てみましょう。

(上司の世界)

月曜日の朝、上司であるあなたは今、チームメンバーと共に会議に出席している。
メンバーの一人が先週の振り返りと今週の予定を報告している。
あなたは、報告するメンバーに体を向け、頷きながら報告内容を聞いている。

…….つもりだった。。。。

「〇〇さん、それでよろしいですよね?」

発言している部下のA君があなたの方を向いている。

「あれ?何か確認しているのか?一体何のことだ?」

あなたはふと我に返り、なんのことか逡巡し、大したことではないだろうと判断を下す。

話を聞いていなかったことを悟られぬよう、生返事を返しその場をやり過ごす。

そして、その日の午後に事件が起こる。


会議で部下が上司に確認を求めたのは、商談の時間変更でした。16時からの予定を14時に変更して良いかを尋ねられ、上司は生返事で承諾しましたが、実はその時間は別の社内会議が入っていたのです。ダブルブッキングです。上司は、上の空で会議に出席していました。なぜでしょう。朝の会議が始まる3時間前、朝の上司の自宅で起こっていたことを覗いてみましょう。


あなたは、リビングで娘と一緒に朝食をとっている。

おもむろに娘が「学校に行きたくない」と言い出した。

あなたは、学校に行きたがらない娘を頭ごなしについ怒鳴りつけてしまった。

娘は大泣きし部屋に籠ってしまう。

部屋に籠る娘を家に残したまま、あなたは家を出て会社に向かった。

あなたは、朝の会議の間中、ずっと娘のことが気になってしょうがなかった。

「あの後、学校に行っただろうか?」
「強く言い過ぎてしまったな」
「なんで学校に行きたくなかったんだろう?」


上司の心の中では、娘が大泣きする姿が繰り返し映し出されます。上司の体は会議室の中にあるものの、心は家の中に置いてきてしまったままだったのです。このような心の状態の時に、部下のA君から商談の時間変更の確認があり、つい生返事で応えてしまったのでした。もしも、上司が「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことができて、自分の感情や思考に気づいていれば、「1.思考と距離を取る」ことや「2.感情に居場所を作る」ことが可能となり、違った展開になっていたかもしれません。


(部下の世界)

今度は部下A君の世界を覗いてみよう。


あなたは部下で、朝の会議で一通り報告を終え、商談の時間変更についても上司の承諾を得られて、安心している。

今度は、上司が先週の活動内容と今週の予定を報告し始めた。

大方、上司の言うことは毎回変わり映えなく、自分に関係のあることは含まれていない。

会議に対するあなたの集中力は途切れ、心の中では時間変更した商談のシミュレーションを始めた。

「会議が終わったら、時間変更の返事を急ぎで先方に知らせよう」
「前回の議事録に目を通しておこう」
「プレゼン資料を印刷しておこう」
「抜かりはなさそうだ、いい商談になりそうだ」
「おっと応接室の時間変更もしておかないと」

シミュレーションを一通り終えたところで、上司がこちらを向いて黙っていることに気づく。

「あれ?なんだこの空気は?」

「まずい」と思った瞬間、上司から「聞いていたのか?」と問い正される。

あなたは、上司の機嫌を損ねたくない。反射的に「はい」と生返事をする。

「じゃあ、よろしく頼む」と上司から言われる。

そして、その日の午後に事件は起こる。

(午後の事件)

朝の会議の上司の確認は、お客さんからのクレームに対応するメールを送る指示でした。ところが、部下のA君は何もやらぬまま午前中を過ごしてしまいます。午後一でお客さんからクレームに対する返事がないとクレームのクレームが発生し事態は悪化してしまいます。上司が電話でお客さんに謝罪し、なんとか事なきを得ましたが、部下A君は、この後、上司からひどく叱られます。

「朝の会議で指示したにもかかわらず、どういうことだ!」

上司は、部下A君を会議室に呼び出し、感情的に説教をします。弁解の余地がないA君はただ上司の剣幕が収まるのを待ちます。自責の念に苛まれ気持ちの切り替えができず仕事に身が入らぬまま、時間変更した商談を迎えることになりました。気まずい思いをしながら、部下A君は上司の席に歩み寄り、恐る恐る「そろそろ応接室に行きましょう」と資料を差し出しながら声をかけます。

すると、上司からは思いがけない返事が返ってきます。

「何を言ってるんだ、商談は16時からだろ」

クレーム対応の件と重なって、上司は語気を荒げて資料をつき返してきました。

「14時からは管理部門との打ち合わせが入っている」

部下A君は、全身から力が抜ける感覚を覚え混乱しながらも、朝の会議で上司が時間変更を承諾し、すでに先方は応接室で待機していることを告げます。


ややこしい展開です。朝の会議で上司も部下A君も心あらずの状態であったばかりに、ミスコミュニケーションが重なり、組織としては弱り目に祟り目の状態になってしまいました。部下A君のミスが先に発覚したことが事態を余計にこじらせてしまいます。今一度、上司の身になってみましょう。


目の前にいる部下A君に苛立ちを覚えご機嫌斜めなまま、あなたは朝の会議のことを思い返してみます。すると、思い当たる節が見つかります。

「もしかして、あの生返事がこれか」

部下A君同様に自分も話を聞いていなかったことに気づきます。

「しまった!」

あなたは腹部が締め付けられる感覚を覚え、動揺します。先程散々、部下A君を叱りつけてしまった手前、なんと弁解したら良いか逡巡します。


あなたは、どんな反応をするでしょうか。

「そんな話は聞いていない」

と、格好がつかないあなたは、ここぞとばかりに権威を笠に知らぬふりで押し通すでしょうか。

それとも

「すまなかった」

と、素直に自分の非を認め詫びることができるでしょうか。

確信犯として顔の皮を一枚厚くするか、君子豹変することができるか、あなたは自分の反応を選ぶことができます。以前のコラムで取り上げた通り、自分も間違えることを認めることは心理的安全性を高めることにつながります。このような時に謙虚な姿勢を示すことができれば、失敗の経験を利用して信頼関係を築く緒になり、心理的安全性につながっていきます。人の器が試されるところでもあります。

素直に自分の非を認めれば、部下A君は逆恨みするかもしれません。もしくは気を取り直すかもしれません。あるいは親近感を覚えるかもしれません。どのように受け止めるかは分かりませんが、どのような反応をするかはあなた次第です。


これは極端な例かもしれませんが、気を緩めて会話の内容を聞いていなくて、誤魔化したり、生返事をしたりした経験は誰しもあるのではないでしょうか。私たちの心と体がバラバラになってしまうとき、私たちは目の前で起こっていることに気づきにくくなってしまいます。心は自由に過去や未来に飛び回ります。このようなややこしい事態を避けるためにも、「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことは大切なことです。「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことがでれば、自分の感情や思考に気づくことができて、より賢い選択をすることが可能になっていきます。

上司も部下A君も心ここにあらずで会議に出席していたために、ミスコミュニケーションが発生し、自分が何をしたら良いのか理解せず、責任をもった行動が出来ていません。もしも、上司が気持ちと思考の整理をして、「1.思考と距離を取る」ことと「2.感情に居場所を作る」ことができて、会議に集中して部下A君の報告に集中していれば、会議の時間を調整することができたでしょう。もしも、部下A君が上司の話をいつも通りと決めつけず集中していれば、ナイーブリアリズムに気づくことができて、クレーム対応のメールを送ることができたでしょう。そして、二人ともその場で確認をしていれば、このような事件が起こることを避けることができたでしょう。

まとめ

「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことは、まさにマインドフルネスです。マインドフルネスとは、今この瞬間に、心・体・周囲で起こっていることに気づくことです。 意図を持って「注意を払う」「観察する」「思い起こす」などの精神的な行為によって、今この瞬間に起こっていることに気づき、現実をあるがままに受け入れることです。マインドフルネスの実践は、集中力を高め、建設的な人間関係を構築することに効果があることが科学的にも確認されています。「3.今この瞬間に集中し完全につながる」には、マインドフルネスの実践が有効です。

マインドフルネスを実践することは、ナイーブリアリズムや不安にも対応することができるようになり、心理的安全性の要素である好奇心を育むことにもつながります。「3.今この瞬間に集中し完全につながる」ことは、心理的柔軟性の大切な要素であり、前回までに取り上げた「1.思考と距離を取る」「2.感情に居場所を作る」ために必要なことになります。次回は、今までの内容と関連する「4.観察する自己につながる」を取り上げます。

 

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