エモーショナル・インテリジェンス
Emotional Intelligence
エモーショナル・インテリジェンス(EI)は、情動的知性です。EIスキルは、マインドフルネスと固く結びついており、マインドフルネスの実践により、EIスキルが磨かれていきます。
エモーショナル・インテリジェンス(EI)とは
「EI」理論を提唱したピーター・サロベイ(イエール大学学長)とジョン・メイヤー(ニューハンプシャー大学教授)は、EIを「自分自身と他人の気持ちや情動をモニターし、見分け、その情報を使って自分の思考や行動を導く能力」と定義しております。
マインドフルネスプロジェクトでは、EIを心のスキルと解釈します。
EIは、脳の中の理性と情動のコミュニケーションから生まれ、自分自身と他者の心の動きに気づき、理解し、その情報を使って自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする心のスキルです。変化が激しくグローバル化が進んだ現代において、個人の価値観やライフスタイルは多様化してきました。社会の仕組みや働き方も変化していく中で、一人一人が自らの力で生き方を創造していく時代を迎えております。溢れる情報に翻弄され、複雑な人間関係に頭を悩ませ、先行き不透明な将来に誰もが不安を抱えています。心の中には様々な情動が入り混じります。その情動を手なづけ、情動と理性を馴染ませ、自らの行動を選択することができるようにするのが、VUCA時代に求められる情動的知性=EIです。
様々なビジネスシーンにおいて、求められるEI
変化が激しい事業環境の中で、経営者、従業員がリーダーシップを発揮して、自らの潜在能力を引き出し成果を最大化するために、「EI」が注目されています。AI、機械学習、ロボット工学、ナノテクノロジー、生物工学などの技術革新による第4次産業革命を迎えるにあたり、既存の考え方や枠組み、過去の成功体験が通用しなくなり、論理的知性(IQ)だけでは対応しきれなくなってきています。VUCA時代の企業経営では、「EI」をベースに人の心を熟慮したマネジメントのアプローチが新しい価値を生み出す競争力の源泉に繋がると考えられます。
- 新しいビジネスモデルやサービスを生み出すために必要とされる創造力と想像力
- 溢れる情報と早まる技術進化に適切に対応するための集中力とタスク管理能力
- 集合知を引き出すためのコミュニケーション能力と共感力
- 多様化する価値観に対応するための利害調整能力と問題解決能力
- リーダーシップに欠かせない洞察力と思いやり
- 燃え尽きを防ぐためのストレスマネジメント
5つのEIスキル
EIは個人的スキルと社会的スキルの2つのカテゴリーに分けられ、5つのスキルから構成されます。個人的スキルには「自己認識」「自己管理」「モチベーション」のスキルがあり、自分の心の動きを認識し、行動や傾向をコントロールする能力です。一方、社会的スキルには「社会認識」と「人間関係調整」のスキルがあり、他者の気持ちや行動、動機を理解して、人間関係を構築したり改善したりする能力です。
個人的スキル = 自己認識、自己管理、モチベーション
個人的スキルを磨くと、「EI」の基盤となる「自己認識」を深め、思考と情動の傾向や反応、心の奥底にある価値観やニーズなどに自ら気づき、自分の働き方や生き方を俯瞰して捉え直すことができます。「モチベーション」の源泉や傾向に気づき、「自己管理能力」を高めることで、自らの価値観をベースに描いた将来ビジョンに向かって、様々な困難を乗り越え自分自身をナビゲートすることができるようになります。
自己認識 EIの基盤であり、自分の内面の状態、好み、資質、直感を知ること
自分の一瞬一瞬の経験を洞察することだけにとどまらず、自分の長所や短所を理解したり、自分のうちにある知恵にアクセスできたりといった、「自己」の広い領域に及び、自己の心的状態(気分や思考)を現在進行形で認識する能力
自己管理 自分の内面の状態、衝動、資源を管理し、衝動を選択に変えること
衝動的な刺激に対してうまく対応し、意識的に反応を選択することで、自分自身や相手を傷つけないように困難な状況を自ら賢く導いていく能力
モチベーション 価値観に基づいた内発的動機づけであり、自らを元気づけること
自分の価値観や目標、本当に大切なことを明確にし、自分にとって望ましい未来を思い描き、自分の仕事や人生を意味づけし、障害や困難に直面しても内面の回復力を使い、自らを励まし、柔軟性を持って対応することで目標や理想の未来に近づいていく能力
社会的スキル = 社会認識 (共感)、人間関係調整 (リーダーシップ)
社会的スキルを磨くと、「共感力」を駆使してコミュニケーションを取ることができるようになり建設的な人間関係を構築することができるようになります。また、先行き不透明な将来を見通す「洞察力」を磨き利害調整や問題解決能力を高めます。さらに、複雑な人間関係を解決するためのヒントとなる「思いやり」を培い、チームを安心安全の場に導く卓越したリーダーシップを発揮することができるようになります。
社会認識(共感) 相手を理解し、心の波長を合わせること
心理学的に分析したり、何でも同意してしまうことではなく、自分と他の人の気持ちや立場について、明確に区別をした上で、他の人の気持ちを経験したり、理解し、信頼関係を築く能力
人間関係調整 EIのスキルを総動員し、対人能力を発揮し豊かな人間関係を築くこと
思いやりを持って接し洞察力を駆使してリーダーシップを発揮し、他人の情動に働きかけることで難しい状況や人間関係を巧みに調整し、重要なことを成し遂げながら幸せな友好関係を築く能力
EIスキルは、マインドフルネスと固く結びついており、マインドフルネスの実践により、EIスキルが磨かれていきます。マインドフルネスプロジェクトが提供するプログラムは、マインドフルネスの実践を通じてEIスキルを磨き、参加者の潜在能力を最大限に引き出し、高いパフォーマンスと優れたリーダーシップが発揮されるようにデザインされています。
EIに関する調査報告
ダボス会議
自己管理 〜2025年までに重要性が高まるスキル〜
下記の棒グラフは、世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)が2025年までに重要性が高まるスキルを企業経営者に調査した結果(The Future of Jobs Report 2020年10月)です。5割以上の会社が、批判的思考と問題解決能力に加えて、自己管理能力を挙げています。この調査は2016年から始められており、自己管理能力が上位にランクインしたのは今回が初めてです。自己管理能力は、EIの重要なスキルです。この調査における自己管理能力の意味するとことは、アクティブ・ラーニング(※1)、レジリエンス(※2)、ストレス耐性、心理的柔軟性となっています。また、協働作業、コミュニケーションも重要性が高まると考えられており、これらもEIのスキルがベースとなります。
2025年までに求められるスキルTop10 〜EIの要素が4つもランクイン〜
下記の表は、同レポートに記載されている「2025年までに求められるスキルTop15」です。第2位:アクティブ・ラーニング、第5位:想像性、イニシアティブ、第6位:リーダーシップ、社会的影響力、第9位:レジリエンス、ストレス耐性、心理的柔軟性、となっており、EIの要素が4つもTop10にランクインしております。EIそのものは、第11位となっておりますが、EIの各要素が社会的により認識されてきたことにより、個別要素がそれぞれ求められるようになってきております。
(※1)アクティブ・ラーニング: 学修者が能動的に学習に取り組む学習法(ウィキペディア)
(※2)レジリエンス: 逆境、トラウマ、悲劇、脅威、極度のストレス(家族関係の問題、健康問題、職場や経済的な問題)に直面する中で適応していくプロセス(アメリカ心理学会)
共感 〜会社がコロナ禍を生き抜くための鍵〜
ダボス・アジェンダの記事(How 2020 taught businesses to place empathy before profit)では、ビジネスで優先されるべきは利益の前に共感であると書かれています。コロナ禍を通じて企業が認識したこととして、以下3つを挙げています。(マインドフルネスプロジェクト 抄訳編集)
- 共感力:会社は、従業員の経験とニーズを理解すること
- エンゲージメント:EIを備えたリーダーは、自然に従業員とつながること
- 心理的安全性:従業員同士がつながれる場所は、イノベーションのプラットフォームになること
また、共感を持って心を通わせることがなぜ重要なのかについては、以下のように書かれています。
企業はチームメンバーを思いやるEIを備えたリーダーをサポートすべきである。また、組織内に共感を中心に据えた企業文化を育むことが効率性を重視するよりも大切なことである。なぜなら、従業員の気持ちを推し量り、純粋な関心と共感を持って接することが、従業員との間により深い絆を生み出し、パフォーマンスに好影響を与えるからである。
国際連合
2019年5月17日に、SDG’sを達成し、人々がより良い地球市民となることを助け、正義や平和、人権活動と人権保護を推し進め、地球環境を守るためにエモーショナル・インテリジェンス(EI)をどのように活用できるかを検討するために国際連合で紹介されました。EIは、共感を培い、暴力防止と対立後の平和構築に貢献し、対人関係やコミュニケーションを改善し、自分自身と他人の情動についての認識をより深め、レジリエンスを高めることが明らかになっていることが説明されました。
講演者:ダニエル・ゴールマン(ラトガース大学 コンソーシアム・フォー・リサーチ・オン・エモーショナル・インテリジェンス・イン・オーガニゼーションズ 共同ディレクター)、
リッチ・フェルナンデス(Search Inside Yourself Leadership Institute CEO)他
ビジネスの成功要因の58%はEIによる
様々な調査結果から、「EI」がビジネスの成功要因と関係していることが分かっており、時間管理、コミュニケーション力、意思決定などビジネスで必要とされるスキルの土台となっています。「EI」は成功に欠かすことができず、あらゆる職種において、成果の58%は「EI」によって生み出されており、仕事で高い成果を上げている人の90%は「EI」が高く、仕事の成果が低い人のうち、「EI」が高いのは20%という調査結果があります。(引用:TALENTSMART)