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SIY Journey

【Vol.16】 不幸の原因としあわせの時 〜マインドワンダリング〜

サーチインサイドユアセルフ, SIY

ソラ: 私たちが、今、VUCAワールドに生きていて、忙しくしているってことはよく分かりました。変化が激しく、不確実で、複雑で、不透明な世界。そう考えるだけで、なんだか気が滅入ってきます。

心の旅: Mr. SIY、確かこのような世相を反映した調査データがありましたよね。

Mr. SIY: はい。ハーバード大学の心理学者(A. Killingsworth, Daniel T. Gilbert, 2010年)が行った調査が有名ですね。

ソラ:どんな内容なんですか?

心の旅:  確か現代人は目の前のことに集中できていないという内容でした。

Mr. SIY: そうです。「track your happiness」 というiPhoneアプリを使って、83カ国5000人を募集し25万セットのデータを収集した2010年に発表された調査ですね。参加者は、1日の生活の中で、現在の思考や感情がどういう状態かを随時回答していきました。具体的には、参加者は以下のような質問事項にその都度アプリで回答をしていきます。

  • 現在行っている行為
  • 現在の行為に対する集中度合い
  • 現在の幸福感
  • 周囲の環境の性質
  • 睡眠の量と質
  • 人との交流など

ソラ:お〜、そんなアプリがあるんですね。結果はどのようなものだったのでしょうか?

Mr. SIY: 1日の47%の時間を集中できない状態で、現在行っていることとは別のことを考えている状態であるという結果になりました。このような状態をマインドワンダリングと言ったりします。

心の旅: マインドワンダリング。

Mr. SIY: はい。心が現在に落ち着いた状態ではなく、過去や未来のことを考えてしまっている状態ですね。マインドワンダリングは、人間特有の心の状態と考えられ、ある意味、心のエネルギーを無駄に消耗してしまっている状態と言えますね。

ソラ:1日の47%が集中できていないって1日のほぼ半分じゃないですか。言われてみれば、私も結構マインドワンダリングしてるかも。。。。

心の旅:2010年の研究ということは、コロナ禍の前ということですよね。

Mr. SIY:その通りです。このコロナ禍の状況においては、おそらくこの比率はもっと高いのではないでしょうか。私の知人では99%マインドワンダリングだと真顔で言っていました。

心の旅:この状況では笑うに笑えないですよね。

ソラ:でも、よくよく考えてみると、やっていることによってマインドワンダリングの時とそうでない時がある気がするなあ。好きなスポーツしている時とかは47%もマインドワンダリングじゃない気がする。

Mr. SIY: お、鋭い指摘ですね。行為によって、マインドワンダリングの状態にはばらつきがあります。ほとんどの行為で、30%以上の時間がマインドワンダリングの状態で、平均が47%ということです。唯一、マインドワンダリングの状態が30%以下なのはセックスで10%でした。

ソラ:さすがに、愛を交わす時間はマインドフル、ね。

Mr. SIY: また、この調査で研究者たちは興味深い指摘をしています。

「1日の大半、心は彷徨っており、それが幸福度を低下させている」

「今、目の前で起こっていることに集中できている時に人は幸せを感じている」

と指摘しています。

ソラ:分かる気がする。何かに集中して没頭してる時って充実感があるし。

心の旅: どんな時に集中して幸せ感じてるかなあ。

Mr. SIY: この調査では、セックス(10%)、スポーツや会話(30%)の時は比較的マインドワンダリングな状態が低く、幸福感があるとしています。一方で、仕事中、休憩中、家でパソコンをいじっている時は、幸福感が低いと報告していますね。

心の旅: ネットサーフィンは不毛だと思っていても結構やっちゃうんだよなあ。まあ、幸せとは言えないか。ボランティア活動とかで人のために活動している時とかは幸せかなあ。

ソラ:私は、子供達と山登ったり、家で遊んでる時かな。子供達が家の洗い物を手伝ってくれると嬉しいなあ。

Mr. SIY: お二人とも幸せな様子が伝わってきます。そして、幸せな状態は人それぞれですよね。

心の旅:今、話をしていて気づいたことは、幸せなのは誰かと一緒に何かをやってる時が多いのかなと思いました。

ソラ:セックス、スポーツや会話、ボランティア活動、子供達と遊んでる時。確かにね。つながりの中に私たちは幸せを見出しているのかしら。

Mr. SIY: 興味深い気づきですね。もちろん、一人で黙々と何かに取り組んでいる時にも、幸せを感じることはあるでしょう。スポーツと言ってもチームでやるのものもあれば個人でやるものもありますしね。大切なことは、どんな時に自分が幸せなのかを自分が知っておくことでしょう。

ソラ:絵を描いたり、料理をしたり、本を読んだり。幸せな時間は、人それぞれですよね。

心の旅:言われてみれば、幸せって、主観的なものですよね。

Mr. SIY: その通りだと思います。この調査ではもう1点、興味深い指摘があります。それは、「マインドワンダリングは不幸の結果ではなく、不幸の原因である」ということです。これは、希望が持てる重要な指摘です。

ソラ:どういうことですか?

心の旅: マインドワンダリングであっても修正できるってことでしょうか?

Mr. SIY: その通りです。詳細は別の時にお話ししますが、マインドワンダリングな状態になってしまうのは、脳の構造上、仕方がないんですね。マインドワンダリングな状態は、修正できる、つまり、今、この瞬間にしっかりと集中することはできるようになる、ということです。

ソラ:それって、もしかして、マインドフルネスってやつですか?

Mr. SIY: その通りです。いわゆる「今、ここ」の状態を意識的に作ることで、このマインドワンダリングな状態は抜け出せます。

心の旅: これは朗報です。マインドフルネスによって、幸せになれる可能性があるってことですね。

Mr. SIY: 私の経験からも「今、ここ」を感じられるようになる時間が増えると、生活の質が高まっていく実感があります。幸せを感じられるなら、やらない理由は見当たらないですよね。また、心理学者のエド・ディーナーは、幸福感について興味深い指摘をしています。

「幸福に関わるのは、ポジティブな経験の強さよりも、ポジティブな経験の頻度が重要」

これについても改めてお話ししていきましょう。

(参考)「Wandering mind not a happy mind」(Harvard psychologists Matthew A. Killingsworth、Daniel T. Gilbert)

Wandering mind not a happy mind

 

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