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SIY Journey

【Vol.13】マルチタスクは有効か 〜二重課題干渉〜

SIY マインドフルネスプロジェクト マルチタスク

ソラ:SIYの受講者はどれぐらいいるんですか?

Mr. SIY:50カ国以上で10万人以上が受講しています。

ソラ:10万人以上ですか!しかもワールドワイドですね!

心の旅: なぜ、今、SIYのようなプログラムに多くの方が関心を寄せているんでしょうか?

Mr. SIY:一言で言えば、現代の世相を反映しているのだと思います。

心の旅: 世相ですか。

Mr. SIY:はい。心の旅さんやソラさんは、今、どんな生活をしていますか?

心の旅: とにかく忙しいですね。仕事ではやることがいっぱいあるし、SNSやYoutubeのチェックにウェビナーの参加。休む暇がないぐらい、しょっちゅう何かしている感じです。

ソラ:私も似たような感じです。子供達も塾や部活、習い事で忙しくて、私も仕事が忙しくて家族の時間も持てない感じです。週末の朝少し一緒に過ごすことができるぐらいかなあ。さらに、職場の人間関係や子供の学校の人間関係にもいろいろ気を遣うし、なかなか休まらないのが現状ですね。

Mr. SIY:お二人とも本当にお忙しそうですね。その傾向はお二人だけではありません。私たちは、今、とても忙しい日々を過ごしていますよね。ワークライフ・バランスとは言いますが、果たしてどのあたりが本当にバランス良い塩梅なのか、みんな手探りの状態なのではないでしょうか。

心の旅:ワークライフ・バランス、響きはいいんだけどなあ。実態がなかなか伴わないのが現状ですね。相変わらず、有給休暇の消化率は低いし、残業しない分、週末家で仕事をやったり。コロナ禍では、リモートワークでオンとオフの切り替えが難しかったり。

ソラ:子供がいて仕事をしている女性は特に難しいわ。子供を預けるにも預けられなくて、キャリアを諦める人の方が相変わらず多いし。

Mr. SIY:テクノロジーの発達で、世の中には膨大な情報が溢れるようになりましたね。5Gが始まりさらに情報量は増加して、情報化社会はますます進んでいくでしょう。

ソラ:情報に振り回されている感じはありますね。今回のコロナの件でも、一体どれが正しい情報なのか明らかでないために、色々と調べるんだけど、調べるうちにますますどツボにはまって、情報疲れ、コロナ疲れしたわ。仕事の連絡や子供の連絡もあるから、スマホは手放せないですし、スマホを持っているとついSNSを覗いてしまって、時間が過ぎていくこともしばしばあります。

Mr. SIY:情報疲れは情報に振り回される現代の私たちの象徴的な現象ですよね。私たちは、今、常に繋がっているONの状態になっていますね。なかなか、本当の意味でのOFFの時間を持ちにくくなっています。

心の旅: twitterやinstagram、facebookなどは友達と気軽に繋がれて便利なんだけど、見ちゃうと返事したくなったり、自分も呟いたり写真をアップしたくなってしまい、年がら年中スマホを見ている感じになってますね。仕事でもタスクが次から次へとやってくるので、同時並行的に作業を行って1つのタスクが終わっても、霧がないというか、終わりがありません。

Mr. SIY:1度に2つ以上のタスクをこなそうとするマルチタスクですね。

心の旅: マルチタスク!それです。響きはいいんだけどなあ。

Mr. SIY:実はマルチタスクというのは、効率を上げるのではなく逆に非効率になっているということをご存知でしたか。

心の旅: え〜そうなんですか。電話しながら、メールの返事とか、データ分析しながらプレゼンの資料作ったりとか、当たり前のように毎日やってます。上手くこなせてると思ってたけど、効率的でなかったのかな。

Mr. SIY:感覚的には同時並行的に仕事が進捗していくので、できてる感を覚えるかもしれませんね。「二重課題干渉」と呼ばれる研究によってマルチタスクの方がユニタスクよりも作業効率が悪いことが確認されています。

心の旅:二重課題干渉?ですか。

Mr. SIY:はい。二重課題干渉は、二つのタスクを同時に行おうとすると、どちらか一方、あるいは両方のタスクにおいてエラーが増えたり反応時間が長くなったりするこの現象のことです。つまり、脳は1つのタスクに集中してる時が脳の資源を効率よく使えているということです。二重課題というのは、マルチタスクのことで、いわゆる「ながら」ですね。例えば、車を運転しながら携帯電話で話をすることは典型的な二重課題の場面ですが、携帯電話通話中の運転者が交通事故を起こし易いことが明らかになっています。

心の旅:それ、危ないやつですね。車だけではなくて、自転車乗りながらのスマホや駅構内の歩きスマホの事故が報道されますね。二重課題干渉はどうして起こるんですか?

Mr. SIY:二重課題干渉は、「注意」「記憶」「思考」など、脳の限られた処理資源の配分を巡って2つの課題が競合するために起こると考えられています。

心の旅:脳の処理資源??ですか。

Mr. SIY:はい。タスクを実行するためには、脳はエネルギーを使います。脳のエネルギーは無限大にあるわけではなくて、限りがあります。例えば、物を考えたり、記憶したり、集中したりするときには、その限りあるエネルギーを上手に配分しなくてはいけません。一般的には、二重課題干渉は、脳の処理資源の容量を超えてしまいパフォーマンスが低下すると考えられてきているのですが、未だ解明できていないことがあります。

心の旅:というと?

Mr. SIY:例えば、処理資源の分配や2つのタスクの調整の仕方などについてです。具体的には、二重課題干渉のメカニズムを解明するために必要なこととして以下の3点が挙げられます。

  1. 処理資源が脳内のどこに存在して、どのような形態なのか(処理資源の存在)
  2. 課題遂行に伴う認知的な負荷がかかる時、どのような神経活動が行われているのか(認知的負荷時の神経活動)
  3. 課題の負荷に応じた処理資源の配分はどのような神経活動によって表現されているのか(処理資源の配分)

心の旅:そもそも処理資源とはどんなものなのか、二重課題をやっているときに、脳の中でどんなことが起きているか、という点ですね。

Mr. SIY:はい。未解明なことがある一方で、脳機能イメージング研究によって、二重課題の遂行に不可欠な神経ネットワークの存在が明らかにされつつあります。数多くの研究で、前頭連合野の多くのニューロンが二重課題に特有の活動パターンを示すことが報告されており、前頭連合野が二重課題の遂行に重要な役割を担っていることが示されています。

ソラ:内容が難しくて、ちゃんと理解できてるか不明ですが、今までの話を聞いていると、マルチタスクは脳の働きを踏まえると、脳のパフォーマンスを上手に引き出していないということで、あってます?

Mr. SIY:そうなりますね。少し専門的な話になってしまいました。身近な話に戻しましょう。お二人とも、ランチを食べながら、パソコンでメールチェックしたりしてませんか。

心の旅: 時々あります。

ソラ:家でご飯食べるときはだいたいテレビ見たりとか。

Mr. SIY:その時って、ちゃんとご飯の味は味わえていますか?メールの内容やテレビの内容は頭に入ってるかもしれませんが、人参の甘みやさつま芋のホクホクした食感を楽しんでますか?

心の旅:そう言われると、ほとんど味わえてない。これも脳の資源がうまく使えていないということ、なのか。それに僕の場合は、仕事が忙しくて食事の時間を短縮したいので、食べ物を体の中に流し込んでる状態に近いかもしれません。

Mr. SIY:せっかくの食事がいわゆる時短の対象になっているという事ですね。お二人を責めてるわけではないんですが、私たちはそれぐらい忙しく生活をしているということですね。一つのことに集中して、何かを行うことが難しくなっている。

ソラ:しかもそれは脳のパフォーマンスを発揮できていない。

Mr. SIY:常に繋がっているONの状態で、心を休める時間がなかなか取れない状態。このような状態から少し距離をとるためにも、マインドフルネスエモーショナル・インテリジェンスの知恵が求められている。それが先ほど申し上げた世相を反映している、という意味です。

ソラ:確かに。仕事が終われば、OFFになるかと言えば、そうでもないし。いつもそわそわしていて、落ち着かない時間が多い。エネルギーをうまく配分できなくて、脳は混乱してるのかもしれないわ。SIYは、そんな状態を和らげてくれるということなのかしら。

Mr. SIY:そうですね。認知のプロセスには、マインドフルネス瞑想は有効ですし、SIYは、ONとOFFのモードを上手に切り替えられるように、自分自身を最適化していくプロセスに導くプログラムだと言えます。

ソラ:自分自身を最適化、したいです。

心の旅:認知のプロセスとマインドフルネス瞑想が関わってくるのか。僕ももちろん最適化したいですね。

Mr. SIY:マルチタスクの非効率化と共に抑えておきたいのが「認知上の役割転換」という考え方です。

心の旅:わわ、また難しそうな言葉が出てきました。認知上の役割転換ですか?

Mr. SIY:はい。認知上の役割転換というのは、脳は、気になることをやるのがエネルギーを効率的に使えて集中できるということです。オーラルロバーツ大学経営学部准教授のデイビッド・バーカスが提唱している考え方です。これもマインドフルネス瞑想と関わりがある内容です。次回詳しくみていきましょう。

ソラ:ついていけるかなあ。不安だけど、次回も楽しみにしています!

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