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コラム

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マインドフルネス

マインドフルネスの誤解(中編) 〜呼吸瞑想と呼吸法の違い〜

マインドフルネス

前編では、「マインドフルネス=呼吸」という誤解を解くために、マインドフルネスの意味について整理しました。中編では、呼吸瞑想と呼吸法の違いや呼吸瞑想以外の瞑想法の意味を明らかにして、命題に対する回答を明らかにしていきましょう。

呼吸瞑想と呼吸法の違い

そもそも呼吸瞑想とは

マインドフルネスの気づいている力を培っていくために、瞑想を実践します。とりわけ、気づいている力の基本が注意力になります。この注意力を鍛えるために呼吸瞑想を実践し、注意の対象として、呼吸が使われます。この呼吸瞑想はマインドフルネスの実践方法の1つであり、最もよく知られている瞑想法です。呼吸瞑想以外にも注意力を高めるための瞑想法があり、周囲の音や特定の色など呼吸以外の様々なものが注意の対象となります。

呼吸法との違いとは

呼吸瞑想と似て非なるものとして、呼吸法があります。呼吸法と呼吸瞑想を同じものだと誤解している人もいるので、この違いについても見ておきましょう。多くの呼吸法の特徴として見られるのは、呼吸をあるルールに基づきコントロールすることです。例えば、4秒で吸って、8秒で吐き出す方法や、腹筋を使ってお腹を力強く膨らませたり凹ませたりする方法や、息を意図的に止めたり、長く吐き出す方法などがあります。このように呼吸法では、呼吸そのものをコントロールするのに対し、マインドフルネスで実践する呼吸瞑想では、呼吸をコントロールしません。できるだけ自然な呼吸をして、あるがままの呼吸に注意を向けたり観察したりします。

コントロールするかしないか

呼吸法では呼吸をコントロールすることで、主に肉体に働きかけ神経系や血中の二酸化炭素濃度、pHなどの生理学的な変化を意図的にもたらそうとします。一方、呼吸瞑想では、自然な呼吸に注意を向け、主に精神に働きかけ気づいている力を鍛える副産物として、自律神経が調ったり、体温に変化が生じます。呼吸法は直接的に生理学的な変化を促すアプローチで、呼吸瞑想は、間接的に生理学的な変化が生じるアプローチと捉えることもできるでしょう。

決して、呼吸瞑想は体を軽んじているということではありません。座禅の取り組み方で、調身、調息、調心と言われるように、まず体を調え、安定感のある姿勢で座ることが呼吸を調え、心を調えていきます。ただそこには力を加えたり、コントロールしようとする意図はなく、自然体で安定感のある姿勢を保つことが重視されます。呼吸法と呼吸瞑想の間に優劣をつけることにはあまり意味がありません。むしろ、実践の効用を理解して、実践者の目的にふさわしい方法を選択することが大切でしょう。

なぜ、いろんな瞑想法があるのか

「マインドフルネス=呼吸」と認識してしまう理由

そろそろ本コラムの命題に対する回答を明示しましょう。「マインドフルネス=呼吸」と誤解してしまう理由は、マインドフルネスの意味を理解していないことと、多くの入門書やインターネットの情報で、マインドフルネスと呼吸瞑想がセットで語られることが多いためでしょう。前編でお伝えした通り、マインドフルネスとは、「気づいている」という意識的な行為そのものであり、呼吸ではありません。瞑想法も呼吸瞑想だけではありません。呼吸瞑想以外に観察瞑想や慈悲の瞑想、ボディスキャンなど様々な瞑想法があります。座って行う瞑想法以外にも歩く瞑想や食べる瞑想、手動瞑想など体を動かしながら行う瞑想法もあります。場合によっては、呼吸瞑想に馴染むようになるまで、呼吸法からアプローチする方法も考えられるでしょう。

脳の多機能性

なかには呼吸瞑想だけでも良いのではないかと感じる方もいるかもしれません。なぜ、こんなに色んな瞑想法があるのでしょうか。理由はシンプルです。なぜなら私たちの心は複雑で、1つのアプローチだけで心を調えることが不可能だからです。私たちの心はいとも簡単にフラフラしたり、ザワザワしたり、グラグラしたりします。心で起こる現象には、喜び、楽しみ、怒り、悲しみ、妬み、恐怖、不安、様々な感情があります。また、過去のことを思い返したり、未来のことを想像したりする思考があります。優しくしようとしたり、意地悪しようとしたりします。利己的に振る舞ったり、利他的に振る舞ったりします。心には様々な変化や反応が起こり、心のプロセスは一筋縄ではいきません。いろいろな現象に対処していくには何層にも広がる心の作用を識り、気づいていくことが鍵になります。これは脳の多機能性の裏返しでもあります。

瞑想によって変化する脳の神経回路

脳の多機能性と表現しましたが、脳には、

  • 注意を司る回路
  • 思いやりや共感を司る回路
  • 心を掻き乱すものに対する反応を司る回路
  • 自意識そのものを司る回路

などさまざまな神経回路があります。これらの回路に働きかけるように、色々な瞑想法をバランスよく実践することで、脳の働きをより優れたものにして、最適な心の状態が保たれるようになります。例えば、サッカー選手が、ドリブルだけ練習していても、試合で活躍できません。パスやシュート、ボールの止め方やフリーランニング、スペースの作り方、ボールの奪い方、など様々な動きができるようになってはじめて、試合で活躍することができます。マインドフルネスも同様で段階を踏んで、心の状態や心理的個性に応じて必要な実践法に取り組み、時間をかけて心に馴染ませていくことで、日常生活や仕事の質が高まっていきます。

まとめ

「マインドフルネス=呼吸」と誤解してしまう理由は、マインドフルネスの意味を理解していないことと、巷に溢れる情報で、マインドフルネスと呼吸瞑想がセットで語られることが多いためであることを指摘しました。呼吸瞑想と呼吸法との違い、いろんな瞑想法のある理由を通じてマインドフルネスにおける呼吸瞑想の位置づけについて整理しました。コントロールしない呼吸瞑想とコントロールする呼吸法は、アプローチ方法が異なりその効用にも違いが見られます。呼吸瞑想以外の瞑想方法がある理由として、脳の多機能性を取り上げました。後編では、マインドフルネスにまつわるもう1つの誤解、マインドフルネスの知識について取り上げましょう。

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