ボディスキャン瞑想 〜ストレスマネジメントの基本〜
コロナ禍でストレスに悩んでいる人が多くいます。多くの調査からマインドフルネスはストレスマネジメントに有効であることが科学的に確認されています。ストレスマネジメントにはいくつかのアプローチがありますが、ボディスキャン瞑想はその基本になります。
体に注意を向ける理由
ストレスマネジメントでは感情に気づき、感情を理解することが大切です。そのために体に注意を向けます。大事な面接で不安を感じている時、愛している人から電話をもらった時、怒りを感じている時など、心拍数が上がったり、手や腋に汗をかいたり、膝が震えたりあなたは自分の体の変化を感じたことがあるでしょうか。
体には感情に関わる様々な情報が現れるのですが、普段、私たちはその情報に気づかないことがあります。感情に気づかず放っておくと精神的な負荷がかかるだけでなく、ホメオスタシス(神経系、免疫系、内分泌系のバランス)が乱れ、不定愁訴として身体的にさまざまな症状が現れ、心身の健康のバランスが崩れてしまいます。下の画像は、体と感情の関係性をよく表しています。
ボディ・マップ
この画像は、フィンランドで行われた調査結果で感情のボディ・マップと呼ばれるものです。701人の被験者が言葉や物語、映像や顔の表情を見せられて感情を経験したときに、身体感覚が増えた部分と減った部分に印を付けた結果です。赤は反応が増した部分で、青は反応が減った部分です。例えば、幸福感は体全体の感覚が増えたのに対して、抑うつでは全身の感覚が減ったということです。身体が私たちの感情についての情報を与えてくれていることがよくわかります。興味深いのは、本調査では様々な文化や民族の人が被験者だったのですが、ほぼ同じ結果になりました。私たちは、様々な感情に対して似たような身体反応を経験していると言えるでしょう。
ボディスキャンの実践
感情を自覚するためには、身体に注意をむける必要があることがお分かりいただけたでしょうか。身体感覚に気づくことができるようになると、感情を高解像度で認識することができるようになっていきます。ボディスキャンは自己認識を深める実践法です。では、ボディスキャン瞑想のやり方を見ていきましょう。最後に音声ガイドのリンクがありますので、やり方を確認したらぜひ実践に取り組んでみてください。
ポイント
- 自分が感情そのものになってしまうのではなく、感情を経験していくつもりで身体感覚に気づいていきましょう。
- 好奇心と優しさを持って、心を開いて身体感覚を経験していきましょう。
- 快、不快、そのどちらでもない感覚、どんな感覚があるか好奇心を持って体の感覚に注意を向けます。
- 良い悪いと評価をすることなく、ありのままの感覚を受け入れていきましょう。
姿勢
- どっしりと座る
- 首や肩周りをストレッチして、適度に力を抜いて、快適な姿勢で座っていきます。
- お尻を椅子の上や床の上にどっしりと預けて、大きな山になったつもりで座っていきます。
- 背筋を伸ばして胸を開いて少し顎を引いて座っていきましょう。
- 目は閉じるか、視線を床に落としましょう。
3回深呼吸
まずはしっかりと息を吐き出して、体の中を空っぽにして、その後しっかりと息を吸い込みましょう。後2回、自分のペースで深呼吸をしましょう。
呼吸に注意を向ける
深呼吸が終わったら、できるだけ自然な呼吸をしましょう。
お腹、鼻、胸、などしばらく呼吸が感じられる場所に注意を向けましょう。
体に注意を向ける
注意を呼吸から体に向けましょう。
体の部分に注意を向けて体の感覚に気づいていきましょう。
快、不快、そのどちらでもない感覚、どんな感覚があるか好奇心を持って体の感覚に注意を向けます。良い悪いと評価をすることなく、ありのままの感覚を受け入れていきましょう。
手と腕
まずは右手の手のひらに注意を向けましょう。
右手の手のひらには今どのような感覚があるでしょうか。
今ある感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
今度は左手の手のひらに注意を向けましょう。
左手の手のひらには今どのような感覚があるでしょうか。
今ある感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
次に左腕全体に注意を向けて今左腕にある感覚に気づいてその感覚を受け入れていきましょう。
しばらく左腕の感覚に注意を向けていきます。
今度は右腕全体に注意を向けて今右腕にある感覚に気づいてその感覚を受け入れていきましょう。
しばらく右腕の感覚に注意を向けて行きます。
足
今一度、好奇心を呼び起こして今度は右足に注意を向けていきましょう。
今、右足にはどのような感覚があるでしょうか。
心地よい感覚、不快な感覚、もしくは感覚が何もない感覚、どのような感覚があっても構いません。
その感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
右膝、右太腿も同様に注意を向けて、感覚に気づき受け入れていきましょう。
次に左足に注意を向けていきましょう。
今左足にはどのような感覚があるでしょうか。
その感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
左膝、左太腿も同様に注意を向けて、感覚に気づき受け入れていきましょう。
お尻と背中
今度はお尻に注意を向けていきましょう。
今、お尻にはどのような感覚があるでしょうか。
椅子や床に触れている感覚に気づいて受け入れていきましょう。
評価や判断をしないで、ありのままの感覚を受け入れていきます。
続いて背中に注意を向けていきましょう。
背中の下の方、背中の上の方、背中全体に注意を向けていきます。
今、背中にある感覚に気づいていきましょう。
お腹と胸
今度はお腹に注意を向けて今お腹にある感覚に気づいて受け入れていきます。
呼吸に伴ってお腹が膨らんだり縮んだりする感覚、呼吸に伴うお腹の変化に気づいていきましょう。
次に胸に注意を向けて、今、胸にある感覚に気づいて受け入れていきます。
今胸にはどのような感覚があるでしょうか。
心臓の鼓動を感じることができるでしょうか。
肩と首
今度は肩に注意を向けて、右肩、左肩それぞれに注意を向けて、今ある感覚に気づいてその感覚を受け入れていきましょう。
次に首にも注意を向けて、今、首にある感覚に気づいてその感覚を受け入れていきます。
コリやハリ、緊張感はあるでしょうか。
頭
今度は頭のてっぺんに注意を向けていきましょう。
今、頭のてっぺんにはどのような感覚があるでしょうか。
心地よい感覚、不快な感覚、もしくは感覚が何もない感覚、どのような感覚があっても構いません。
評価や判断をしないで、その感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
次に後頭部に注意を向けていきましょう。
今、後頭部にはどのような感覚があるでしょうか。
心地よい感覚、不快な感覚、もしくは感覚が何もない感覚、どのような感覚があっても構いません。
評価や判断をしないで、その感覚をありのままに気づいて受け入れていきましょう。
顔
今度は顔に注意を向けていきましょう。
額、眉毛、目、鼻、唇、頬、耳にそれぞれ注意を向けていきましょう。
口角を上げて笑顔を作りましょう。
笑顔を作ったときには、顔の感覚に何か変化はあるでしょうか。
気持ちに変化はあるでしょうか。
体にはどんな感覚があるでしょうか。
体全体
頭のてっぺんから足の先まで体全体に注意を向けていきましょう。
体にある感覚はどんな感情と結びついているでしょうか。
もしも感覚がなければ体の状態はどのような感じでしょうか。
呼吸に戻る
最後に、呼吸に注意を戻していきましょう。
穏やかな注意を呼吸に向けていきましょう。
心を落ち着け、好奇心と優しさを持って座っている感覚を味わいましょう。
体の感覚に注意を払いながらゆっくりと目を開けて意識を部屋に戻していきましょう。
もしも、気になる体の部分があれば、その部分をストレッチしてほぐしましょう。また、強い感情に気づいたら抵抗することなくその感情を認め、その感情を抱くことを許しましょう。
まとめ
ストレスマネジメントには、様々なアプローチがあります。具体的にはヨガやストレッチ、心の中を観察し心のおしゃべりや物語に気づく観察瞑想、テーマに沿ったジャーナリングなどがあります。ボディスキャン瞑想は、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)でも取り入れられているストレスマネジメントの基本アプローチです。最初は、感覚が感じられる部分と感じられない部分の濃淡があるかもしれませんが、感じられても感じられなくても、どちらでも構わないという優しさを持ちながら実践に励むことが大切です。あまり気にせず実践を継続してみてください。
(音声ガイド:ボディスキャン瞑想)