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心理的柔軟性

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ 〜⑤価値を明確にし価値につながる 〜

心理的柔軟性 価値

本シリーズでは、心理的安全性を高めるためにマネージャーができることとして、心理的柔軟性をいかに高めるかに焦点を当てて6つのアプローチをご紹介しています。今回は、「5.価値を明確にし価値につながる」を取り上げます。「5.価値を明確にし価値につながる」は、レジリエンスやモチベーションにも関わってきます。コロナ禍で社員のやる気やメンタルヘルスに課題感がある場合は、「5.価値を明確にし価値につながる」ことが1つのアプローチになってきます。またチームのレジリエンスや心理的安全性を考える上でも、チームの価値を明確にすることとチームメンバーがその価値につながることが大切です。

心理的柔軟性を高める6つのアプローチ

心理的柔軟性が高まると、現実に対して自分の心を完全に開き、今ここで起こっていることの現実を認めることができるようになり、より価値のあることに対して有効にエネルギーを活用することができるようになります。また、心の中で起こっている葛藤や抑圧を解き放ち、受け入れることができるようになり、無駄にエネルギーを消耗しなくなります。心理的柔軟性を高めるために以下の6つのアプローチを用意しています。

6つのアプローチ
1.思考と距離を取る(脱フュージョン)
  • マインドフルネスをベースにしたアプローチ
  • 気づき、心を開き、集中した状態で状況に対応する
2.感情の居場所を作る(受容)
3.今この瞬間につながる
4.観察する自己につながる
5.価値を明確にし価値につながる
  • 認知をベースにしたアプローチ
  • 価値に基づき効果的に行動する
6.効果的な行動を起こす

心理的柔軟性は、大きく分けると「気づき、順応する能力」と「価値に基づいた行動」の2つのパートから構成されます。今まで見てきた「思考と距離を取る(脱フュージョン)」「感情の居場所を作る(受容)」「今この瞬間につながる」「観察する自己につながる」の4つは、「気づき、順応する能力」に当たります。この部分はマインドフルネスをベースにしたアプローチになります。

今回取り上げる「5.価値を明確にし価値につながる」ことは、「6.効果的な行動を起こす」と共に、「価値に基づいた行動」を引き出し、レジリエンスやモチベーションを高め、より自分らしくより賢い行動を導くための大切な要素です。では、価値とは何でしょうか。

価値とは

「価値」とは、あなたが大切にしていることです。生きがいや人生の目的、意味です。あなたの意欲を引き出し、あなたを動機付けあなたの人生に方向性を与える人生のガイドラインであり、心の中にある最も深い欲望です。例えば、以下のような問いかけにあなたは何と答えるでしょうか。

  • 人生で一番重要だと考えていることは何か?
  • どのような人生を望んでいるか?
  • どんな人間になりたいか?
  • 自分の感情と戦ったり恐怖を避けたりしなければ、それに使っていた時間とエネルギーを何に注ぎ込むだろうか?

自分にとって「大切なこと」を明確にし、価値としっかりとつながり、価値に導かれて行動を起こすとき、喜びと活力が漲るだけでなく、たとえ困難な時期でさえ、豊かで満ち足りた、意味ある人生を送ることができます。これがモチベーションやレジリエンスを高めることになります。「大切なこと」と聞くと、目標のことをイメージする人も多いかも知れませんがそうではありません。

価値は目標ではない

価値は目標とは違い、私たちが目指す方向であり、終わりのない進化のプロセスです。目標は、望んでいる成果であり、達成可能なものです。価値とは進もうとする方向を示す東西南北のようなもので、目標とは登ろうと思えば登れる山や川のようなものです。

例えば、子供を遊園地に連れていくというのは目標であり、遊園地に行けば達成されます。一方、子供を愛し、気遣い、援助することは価値であり、永遠に続きます。価値とつながることができれば、子どもと一緒に過ごす時間を過ごすことが大事であることに気づくことができ、遊園地に行かずとも、毎朝の食事や日常的な会話など取れる行動の選択肢が増えます。

また、「自信を持ちたい」とか「愛されたい」というのも価値ではありません。価値とはあなたがしたいことであり、感じたいことではありません。価値とは、あなたが人生でどのように振る舞いたいか、どのように他者や世界とそして自分自身と関わりたいかについての、心の奥深くからくる欲求です。「もしも自信に溢れていたら、どのように振る舞うか」「もしも愛されていたら、どのような行動をするか」を自分に問いかけてみると、あなたの価値が見えてくるでしょう。では、なぜ「5.価値を明確にし価値につながる」ことが重要で心理的柔軟性を高めることになるのでしょうか。

価値はなぜ重要なのか

価値はあなたが何をしたいか、それをどのようにしたいか、友人や家族、自分の体や周囲の環境、仕事に対し、どんな態度で接したいかを決めます。価値に、正しいかどうか、良いか悪いかという基準はなく、価値は人それぞれです。あなたが価値を置くものはあくまであなたの価値であり、それが全てです。仕事のプロジェクトや地域活動などで何かを成し遂げようとしていて、うまくいかない時や困難な状況に陥り、諦め投げ出してしまいたくなる時、価値につながっていれば、直面している現状を受け入れることができ、大変でも努力し続ける意義が生まれてきます。

「夜と霧」を著したヴィクトール・フランクルは、過酷な強制収容所を生き延びたのは、肉体的に健康な人々ではなく、人生の目的にしっかりとつながった人々だったと伝えています。V・フランクルは、自殺志願者に対して「生きることはあなたから何を期待しているだろうか」と問いかけます。「自分の帰りを待つ愛する子供がいる」ことを思い出した者、「執筆途中の本を書き上げる」仕事を思い出した者は、再び生きることに希望を見出し、自殺を思いとどまりました。生きる意味や人生の目的を見出す人は、困難な状況にも立ち向かう勇気と力を持つことができます。

価値はレジリエンスを高める

価値はあなたが世界を生きるに値するものに変え、仕事を働くに値するものに変え、あなた自身を導いてくれるものとなります。コロナ禍で思い通りにいかない困難な状況で、やる気を起こしたり(モチベーション)、ストレスな状況を打開する(レジリエンス)ためには、働く意味や仕事の目的を思い出すことが大切です。

ところが、多くの日本の社会人は、言われたことをやることが体に染み込んでいるため、働く意味や仕事の目的について考えたことがありません。働く意味や仕事の目的を明確にするためには、自分の価値を明確にすることが効果的なアプローチとなります。自分の価値を明確にして、価値とつながることができれば、困難や失敗を経験したとしても自分の進むべき方向を見失わず、今一度自分自身を立て直すことが可能となります。

価値と心理的安全性

チーム内で心理的安全性を高めるためには、マネージャーが自分の価値とつながるだけでなく、チームの価値を明確にしていくことが大切です。コロナ禍のような状況においては、チームメンバーは将来への不安や現状に対する不満を抱え込み、チームの方向感を見失ってしまうリスクがあります。このような時にこそ、マネージャーが価値に沿ったチームのパーパスやビジョンを自分の言葉で明確にし、チームメンバーに進むべき方向性を示していくことが大切です。

価値を発見する実践

価値を発見するにはどうしたら良いでしょうか。問いに応えることが有効です。価値を発見するための問いは様々なものがありますが、手始めに次の問いについて、考え書き出してみてください。

自分が80歳になったつもりで、人生を今日1日の出来事のように振り返ってみます。そして次の文章を完成させてみてください。

  • 私は、◯◯を恐れることにあまりに多くの時間を費やし過ぎた。
  • 私は、◯◯のようなことにほとんど時間を使わずにきた。
  • もし時を戻せるなら、今までやらなかったことで何をするだろうか?

次に、以下の問いについても考えてみてください。

  • あなたが理想の自分になったら、仕事でどのようなことにチャレンジしますか?
  • あなたが理想の自分になったら、上司や同僚、部下とどのような関係を築きたいですか?

これらの問いによって、自分の中にある価値に気づくことができる方が多いのではないでしょうか。また、自分が価値を置いている行動と、現実の行動の違いに気づく方もいるかもしれません。もしも、価値と現実の行動に違いがあるようなら、近づけるためには、何ができるか、何をやめるか、何を続けるかを考えてみることは意味があるでしょう。

価値とつながる

上記のエクササイズで自分の価値が見つかり明確になったら、その価値とつながることが大切です。価値とつながることは新しい未来を創造します。過去には価値とつながっていなかった時もあるかもしれませんが、これからは「今ここ」にある価値とつながることができます。自分の方向性を見失いそうな時やチームが困難な状況にある時には、この価値を思い起こし価値とつながるよう働きかけることが大切です。

まとめ

「価値を明確にし価値につながる」ことは心理的柔軟性を高め、困難な状況や失敗を乗り越える方向性を与えてくれます。自分が価値を置く人生を生きることは、自分の人生を意味あるものに変えていきます。自分が価値を置く働き方は、自分の仕事を意味あるものに変えていきます。次回のコラムでは、「5. 価値を明確にし価値につながる」を踏まえ、「6.効果的な行動を起こす」を取り上げます。

 

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