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レジリエンス

レジリエンスを高める「楽観性」を培う説明スタイル

説明スタイル レジリエンス

前回のコラムでは、現実的な楽観性とレジリエンスの関連性について取り上げました。現実的な楽観性によって「注意の幅」が広がり、「状況」「目標」「意味」の設定が可能になり、心理的柔軟性が高まり、レジリエンスが高まることを紐解きました。本コラムでは、具体的にいかに現実的な楽観性を育むかを見ていきましょう。その鍵は「説明スタイル」と呼ばれる、自分自身への出来事の説明の仕方にあります。

楽観性を育む「説明スタイル」

楽観性を育む上で、鍵になるのは「説明スタイル」です。「説明スタイル」とは、出来事を自分自身にどのような言葉で説明するか、のことです。ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士は、楽観的な人と悲観的な人の間では、説明スタイルに大きな違いがあることを明らかにしました。

悲観的な説明スタイルを楽観的な説明スタイルへ、意識的に変えることで、楽観性が高まり、「状況」「目標」「意味」の設定ができるようになり、レジリエンスが高まっていきます。悲観的な人は、困難な状況で、自分を責め(自責化)、その状況がずっと続き(永続化)、それ以外のこともうまくいかなくなる(普遍化)と考える傾向があります。このような悲観的な考え方を楽観的なものに変えるために、「出来事の原因」「長さの予測」「範囲の予測」に注目します。

例えば、あなたが恋人にフラれたとしましょう。あなたは自分自身にどのような説明をするでしょうか。

出来事の原因:自分以外の原因を考える

  • 悲観的な人:「恋人に振られたのは、自分に思いやりがなく、自分がポンコツだからだ」
  • 楽観的な人:「お互いの価値観が合わず、相性が合わなかったのだろう」

悲観的な人は、出来事の原因が自分だけにあると考える傾向があります。(自責化)
楽観的な人は、出来事の原因が自分以外にもあると考える傾向があります。

長さの予測:一時的なものだと捉えて、前向きに考える

  • 悲観的な人:「もう2度と私には恋人は現れないだろう」
  • 楽観的な人:「今回の経験を糧に、次には自分にふさわしい人とお付き合いをしよう」

悲観的な人は、出来事の影響がいつまでも続いてしまうと考える傾向があります。(永続化)
楽観的な人は、出来事の影響がいつまでも続くわけではないと考える傾向があります。

範囲の予測:限定的であると捉えて、できることに取り組む

  • 悲観的な人:「恋人との関係だけでなく、他の人との関係も仕事もダメになるだろう」
  • 楽観的な人:「がっつり凹んで反省した後は、気持ちを切り替えよう。友達に連絡して食事したり、今取り組んでいる仕事に励もう」

悲観的な人は、出来事の影響の範囲がいろんなところに波及すると考える傾向があります。(普遍化)
楽観的な人は、出来事の影響の範囲は限定的であると考える傾向があります。

楽観的な人と悲観的な人では、説明スタイルが大きく異なり、「出来事の原因」「長さの予測」「範囲の予測」の捉え方が反対になります。楽観的な人の考え方は、まさに将来に対して希望を持って前向きであることがよく分かります。楽観的な説明スタイルは、「状況」「目標」「意味」の設定に働きかけ、心理的柔軟性を高め、レジリエンスを高めていきます。

上記は、ネガティブな出来事の事例ですが、ポジティブな出来事が起こると、説明スタイルはこの逆になります。悲観的な人は、ポジティブな出来事に対しては、自分以外の原因を見出し、いつまでも続くわけではないと考え、他にポジティブなことは起こらないだろうと考える傾向があります。一方で、楽観的な人は、ポジティブな出来事に対し、自分の重要性を認め、長期的に続き、他のこともうまくいくだろうと考えます。

楽観性とマインドフルネス

楽観性を育むためには、自分の説明スタイルに気づくことが大切です。私たちの脳は、無意識的に習慣的なパターンで反応する傾向があります。ですから、自分が楽観的に出来事を捉えているか、悲観的に捉えているか、普段は意識することはあまりありません。少し立ち止まって、普段、自分は悲観的に物事を捉えがちなのか、それとも楽観的に物事を捉えがちなのか、意識的に自分の心の傾向に気づくことがレジリエンスを高めることにつながっていきます。

  • 自分はどのように出来事を捉えているか
  • どのような言葉で自分に語りかけているか
  • 自分の心の中にはどのような感情があるか

に気づくことから、楽観性は始まります。マインドフルネスの実践は、自分の心の中を観察することで、自分の思考や感情に気づく力を高めていきます。また、ジャーナリングと呼ばれる「書く瞑想」も効果的なアプローチ方法です。ジャーナリングは、心の中をありのままに書き綴っていく手法です。「今気になっていることは」「私がイラッとしていることは」「挫けそうなとき私は」などのテーマで、思いつくままにノートに書き取っていきます。

極端に悲観的にもくしは、極端に楽観的に出来事を捉えていることに気づいたら、説明スタイルを活用して、「出来事の原因」「長さの予測」「範囲の予測」について偏りや固定観念を取り除き、できるだけありのままに出来事を自分自身に説明してみましょう。現実的に楽観的に出来事を捉えた上で、「状況」「目標」「意味」の設定を試みると、困難な状況に対応していくことができるようになっていきます。

まとめ

本コラムでは、レジリエンスを高める現実的な楽観性をいかにか育むかを「説明スタイル」を中心に紐解きました。生きていれば、ポジティブな出来事もネガティブな出来事も起きます。その時に、どのような「説明スタイル」で自分自身にその出来事を説明するかで、心の中に生まれてくる感情が変わり、行動も変わってきます。

現実的で楽観的な人は、困難な状況において、自分以外の原因を考え、一時的で限定的なものであると捉えて、「状況」「目標」「意味」を再設定することを試みます。楽観性によって、状況をポジティブに捉え、適切な目標を設定し、人生に意味を見出し、困難な状況に対して主体的に創造的に関わろうとします。一方、悲観的な人は、ネガティブな予測に気弱になり、困難や逆境の中に希望を見出せず、自己を憐れんだり、他者を恨んだり、問題を否定したり、状況から逃げようとします。現実的で楽観的な人は、悲観的な人よりも心理的柔軟性を高めることができて、状況を大局的に捉えることが可能となります。

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