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レジリエンス

レジリエンスの源 〜現実的な楽観性〜

現実的な楽観主義 レジリエンス

楽観性と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか?

  • 何でもかんでもポジティブに考えること
  • ネガティブなことを無視すること
  • 能天気に全てがうまくいくと思い込もうとすること

もしかしたら、このように楽観性を捉えている方もいるかもしれません。このコラムでは、レジリエンスの原動力と考えられる「現実的な楽観性」について取り上げます。

楽観性とは

そもそも、楽観性とは何でしょうか?悲観性と対比して、まずは楽観性について考えてみましょう。

楽観的な人は、「未来は明るく努力すれば成功する」と考えます。
悲観的な人は、「未来は暗く努力は報われない」と考えます。

楽観的な人と悲観的な人とでは、将来に対する見方が正反対になります。この将来に対する見方の違いが行動や周囲との関係性に影響を及ぼすことは容易に想像がつくでしょう。楽観的であることは、逆境に対して積極的、かつ創造的に立ち向かおうとする姿勢を後押しします。また楽観的な人の周りにはポジティブなエネルギーが生まれ友好的な人間関係が育まれていきます。

楽観性とは、物事はうまくいくはずであるという希望と信念に満ちた未来思考の前向きな姿勢

楽観性は、レジリエンスを発揮する原動力であり、他のレジリエンスの要因を補強するエネルギーにもなります。ここで知っておきたいことは、楽観性には2種類あるということです。1つは「現実的な楽観性」であり、もう1つは「非現実的な楽観性」です。レジリエンスを高める楽観性は、「非現実的な楽観性」ではなく、「現実的な楽観性」です。

現実的な楽観性とは

楽観性というと「世界をバラ色の色眼鏡で見ることによって人生の負の部分を無視すること」のように捉えられることがありますが、これは「非現実的な楽観性」と考えられます。非現実的で楽観性の人は、リスクや問題点を認識することなく、ポジティブな面だけに注目し、「すべては必ずうまくいく」と盲目的に将来を予測し、「自分には全く問題がない」と幻想的な万能感を抱き、現実を歪めて認識します。このような非現実的で楽観的な人は、学習や成長の機会を生かすことができず、レジリエンスを高めるどころか、逆に困難な状況において、落とし穴に気づかず、むしろ深みにはまり込み、自分の身を危険に晒すリスクを高めてしまいます。

現実的で楽観的な人は、自分が直面している問題のポジティブな面だけでなくネガティブな面にも注目する

非現実的で楽観的な人は、ネガティブな面を認識することなく、あたかもポジティブなことしかないように現実を歪めて捉えてしまいます。一方、現実的で楽観的な人は、ポジティブなこともネガティブなことも両方あることを認識します。ネガティブな面についても冷静に状況を把握し、自分の力では解決できない問題からは距離をとろうとします。その上で、「物事はうまくいくはずであるという希望と信念に満ちた未来思考の前向きな姿勢」を保ち、自分のエネルギーをどこに注いだら良いかを賢く見定め、解決できる問題に集中します。

現実的で楽観的な人と悲観的な人との違いは、ネガティブな面に対する姿勢です。悲観的な人は、ネガティブな面にばかり注目し、ポジティブな面があることを認識せず、現実を過小評価し、「物事はうまくいかず必ず悪いことが起こる」と考える後ろ向きな姿勢になります。現実的で楽観的な人は、ネガティブな面を認識しますが、それだけに注目し続けることなく、ポジティブな面もバランスよく注目しようとします。

レイク・ウォビゴン効果

非現実的で楽観的な人は、「レイク・ウォビゴン効果」の影響を受けやすいと考えられます。「レイク・ウォビゴン」というのは、作家ギャリソン・キーラ氏の小説に出てくる空想の町の名前です。小説に登場する村の住民は全て平均以上に美男美女で、子供たちはみんな平均以上に優れているという設定になっています。「レイク・ウォビゴン効果」とは、自分もレイク・ウォビゴンの村人たちのように「自分は他の人と比べると、平均以上である」と自己評価を過大に捉え錯覚する傾向であり、米国ホープ大学の心理学者デイビット・マイヤーズ氏により名付けられました。

レイク・ウォビゴン効果を裏付けるように、ロンドン大学の心理学者シャロトとニューヨーク大学の研究によれば、非現実的で楽観的な人は、「自分は平均より健康で長生きすると考え、離婚の可能性を低く見積もり、自分の将来の展望や職業上の成功の可能性を高く見積もる傾向がある」ことが確認されています。能力が低い人ほど「自分は平均以上である」と思い込む傾向が強いことも知られています。非現実的で楽観的な人は、気分良くいることを優先するために、困難な状況に陥ったときにはうまく対応することができず、結果大きな過ちや失敗を招く恐れがあります。一方で現実的で楽観的な人は状況をうまく乗り越えるための機会を増やそうとします。

嵐の予報に対して

例えば、嵐の天気予報の時、どのように考えどのような行動を取るでしょうか。

非現実的で楽観的な人は、嵐の存在を否定し、「嵐など来る訳が無い」「自分は濡れることはない」と考えます。そのように考えたところで、嵐は来ますし、傘を持たずに外出すれば、ずぶ濡れになってしまいます。現状を適切に認識することを怠り、将来に対する予測、見積りが甘すぎる、もしくは愚かと言えるでしょう。

悲観的な人は、嵐が来る前から、「嵐が来るなんて嫌だな」「仕事に行きたくないな」と考えます。嵐という状況に飲み込まれ、ネガティブな側面にしか注目できない視野狭窄の状態に陥り、嵐に対する具体的な対応方法を考えることができません。場合によっては、会社をサボってしまおうかと現実から逃げるような行動をとったり、一日中憂鬱に過ごしてしまうかもしれません。

現実的で楽観的な人は、「嵐が来るなんて嫌だな」と思っても、「嵐」という出来事と、「嫌だな」という感情を受け入れて、その状況の中でできることを考えます。いつもより早めに家を出たり、レインコートを着たり、長靴を履いたり、嵐対策を立てて、状況に対応します。そして、この嵐はいつまでも続くわけではなく、「やがて収まるだろう」と考えます。これが、「希望と信念に満ちた未来思考の前向きな姿勢」と言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。みなさまは、楽観的な人でしょうか?悲観的な人でしょうか?現実的で楽観的な人でしょうか?非現実的で楽観的な人でしょうか?本コラムでは、「現実的な楽観性」を取り上げ、悲観性と非現実的な楽観性を対比しました。悲観的な人は、ネガティブな面ばかりに目をむけ、非現実的で楽観的な人はポジティブな面ばかりに目を向けます。両者とも現実を歪めて捉えていると言えるでしょう。

一方、現実的で楽観的な人は、自分が直面している問題のポジティブな面だけでなくネガティブな面にも注目した上で、物事はうまくいくはずであるという希望と信念に満ちた未来思考の前向きな姿勢を保ちます。ありのままに現実を認識した上で、自分にできることに力を注ぎ、困難な状況や変化に対応しようとします。現実的な楽観性を育むためには、ありのままに現実を認識する必要があります。そのためには、マインドフルネスが有効です。また、自分自身の特性や心の傾向を適切に把握する自己認識の力を養う必要もあるでしょう。次回のコラムでは、現実的な楽観性とレジリエンスの関わりついて考えてみたいと思います。

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レジリエンス・トレーニング:FLEX

 

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