現実的な楽観性はいかにレジリエンスを高めるのか?
前回のコラムでは、レジリエンスの源である「現実的な楽観性」について、取り上げました。現実的な楽観性は、自分が直面している問題のポジティブな面だけでなくネガティブな面にも注目した上で、将来に対して希望を持って前向きな姿勢を保ちます。本コラムでは、現実的な楽観性とレジリエンスの関係性を紐解いていきます。
現実的な楽観性はいかにレジリエンスを高めるのか?
前回のコラムで見た通り、現実的な楽観性は、「注意の幅」を広げ、多角的な視点から現実を捉えることを可能にし、心理的柔軟性を高めます。心理的柔軟性が高まることで、ネガティブな面についても冷静に状況を把握し、解決できない問題からは距離をとり、自分にできることに力を注ぎ、困難な状況に対応することができるようになります。具体的には、現実的な楽観性によって、「状況」「目標」「意味」を設定することが可能となり、心理的柔軟性が高まり、レジリエンスが高まっていきます。
- 「状況の設定」:状況をポジティブに捉え直す
- 「目標の設定」:問題解決に取り組む
- 「意味の設定」:出来事や人生に意味を持たせる
「状況の設定」:ポジティブに捉え直す
繰り返しになりますが、現実的な楽観性はネガティブな面を無視することはありません。ただし、ネガティブな面に注目しすぎることもありません。現実的な楽観性は、「注意の幅」を広げ、ネガティブなこととしてはじまった状況をポジティブなものとして設定し直す能力を高めます。「状況の設定」によって、困難の中にチャンスを見出すことが可能になります。
「目標の設定」:問題解決に取り組む
現実的な楽観性は、「注意の幅」を広げ、必要な情報を集め、必要なスキルを身につけるための計画を立て、適切な目標を設定することを可能にします。「目標の設定」によって、困難の中で何をすべきかを考え、効果的な行動をとり、問題解決に積極的に取り組むことができるようになります。
「意味の設定」:出来事や人生に意味を与える
現実的な楽観性は、「注意の幅」を広げ、人生に意味をもたらします。多くの研究結果から、人生の意味とポジティブな感情との間には、相関性があることが確認されています。「意味の設定」によって、人生に対する前向きな姿勢が生まれ、困難な状況をより大きな枠組みの中で捉えることができるようになります。
「注意の幅」を広げる楽観性
楽観性によって「注意の幅」が広がることによって、「状況」「目標」「意味」の設定が可能になります。注意の幅が狭いと、固定観念や思い込みによって現実を捉えがちになります。ここにレジリエンスとマインドフルネスのつながりが見えてきます。マインドフルネスの実践は、注意の力や心の傾向を観察する力をトレーニングします。マインドフルネスが楽観性の基本であると言えるでしょう。
悲劇の中の楽観性
意味の設定に関して、強制収容所の生き残りであるV.フランクルは、逆境の中に意味を見出すことができる能力を「悲劇の中の楽観性」と表現し、著書「夜と霧」の中で以下のように述べています。
希望のない状況に直面している時、変えることのできない運命に直面している時ですら、人生に意味を見出せる可能性があることを忘れてはならない
また、V.フランクルは、「人生の意味は誰かから与えられるものではない」とも述べ、ある人物にとって意味のあることが、他の人にとっても意味があるとは限らない、また同じ人にとっても時が違えば意味も違うかもしれないと指摘しています。(「夜と霧」については、過去のコラムで詳しく取り上げているので、こちらをご参照ください)
あなたは、今、人生にどんな意味を見出しているでしょうか。
まとめ
本コラムでは、「状況」「目標」「意味」の設定に注目して、現実的な楽観性がいかにレジリエンスを高めるかを紐解きました。現実的で楽観的な人は、「状況」「目標」「意味」を設定することで、状況をポジティブに捉え、適切な目標を設定し、人生に意味を見出します。結果的に、心理的柔軟性が高まり、状況を大局的に捉えることが可能となり、それぞれの出来事に主体的に創造的に関わることができるようになります。
「注意の幅」を通じて、「状況」「目標」「意味」の設定とマインドフルネスの関連について触れました。次回のコラムでは、この関係性をもう少し詳しくみていきたいと思います。その鍵は「説明スタイル」と呼ばれる、自分自身への出来事の説明の仕方にあります。生きていれば、ポジティブな出来事もネガティブな出来事も起きます。その時に、その出来事をいかに説明するかで、心の中に生まれてくる感情が変わり、行動も変わってきます。次回のコラムでは、楽観性に影響を及ぼす「説明スタイル」について見ていきましょう。