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コラム

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人的資本経営

人的資本経営の鍵はEI(前編)

2022年8月30日に人的資本経営の開示基準が明示されました。この投稿では、人的資本経営の本質について考えてみたいと思います。人的資本経営には、エモーショナル・インテリジェンス(EI)が関わってきます。中でも自己認識が重要だと考えられます。まずは、人材版伊藤レポートに立ち返ってみましょう。このレポートでは、3 つの視点と5 つの共通要素が示されています。

「人」を対象にする人的資本経営

マインドフルネスプロジェクトが注目するのは、3番目の視点に出てくる「企業文化として定着」、5つの共通要素の2番目に出てくる「環境」と4番目に出てくる「社員エンゲージメント」という言葉です。

(視点3)「人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか」
(要素2)「個々人の多様性が、対話 やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのか」
(要素4)「多様な個人が主体的、意欲的に取り組めているか(「社員エンゲージメント」)といった要素も必要となる」

  • 文化
  • 環境
  • エンゲージメント

この3つの言葉から浮かび上がってくるのは、「人」そのものをみるということではないでしょうか。文化や環境やエンゲージメントは、ロボットが作り出すことはできません。人的資本経営は、まさに「人」そのものを対象としていると言えるでしょう。それでは、人とは何でしょうか。

個性を活かす人的資本経営

「人」には、それぞれ個性があります。ロボットのように同じ仕様で出来上がっているわけではありません。身体的な個性もあれば、精神的な個性もあります。人的資本経営は、この個性を生かしながら企業経営を実践するということではないでしょうか。とりわけ、人的資本経営においては精神的な個性、すわなち心を対象にしていると考えてよいでしょう。今までの企業経営においては、心に触れることは少なかったと思います。(心の経営をされている経営者はいると思いますが、一般論としてまだまだ少ないという意味です)それでは、心とは何でしょうか。

心には、思考があり感情があります。この思考と感情に対して、「企業はどのようにアプローチしていくか」を人的資本経営は経営者に問うているのではないでしょうか。今まで、多くの企業では、IQ(論理や知識)が重んじられてきました。採用、評価、昇進、昇格などの人に対するアプローチは、IQ中心であったと思います。このIQ至上主義のやり方が通用して、結果が出るうちは良かった。けれど、今ではそうならなくなってきた。だから何かを変えなければならない。そこで、人的資本経営なる概念に白羽の矢が立ったと考えられます。

人的資本経営へのアプローチはEI

AI、機械学習、ロボット工学、ナノテクノロジー、生物工学などの技術革新による第4次産業革命を迎えるにあたり、既存の考え方や枠組み、過去の成功体験が通用しなくなり、論理的知性(IQ)だけでは対応しきれなくなってきた。それでは、どうしたら良いのか。その鍵を握るのが、エモーショナル・インテリジェンス(EI)=感情的知性です。VUCA世界の企業経営=人的資本経営では、EIが新しい価値を生み出し、EIをベースにしたマネジメントが組織力を高め、競争力の源泉に繋がると考えられます。それでは、EIとは何でしょうか。

EIは、脳の中の理性と感情のコミュニケーションから生まれ、自分自身と他者の心の動きに気づき、理解し、その情報を使って自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする心のスキルです。EIは、自分と社会という軸、気づきと行動という軸で4象限に分けられ、自己認識、自己管理、社会認識、対人調整、と大きく4つのカテゴリーに分けられます。

EI エモーショナルインテリジェンス

EI :エモーショナルインテリジェンス

心のスキル:EI

EIは、心のスキルとも表現できましょう。心というのは、感情と思考です。感情と思考をベースに私たちは行動を選択します。行動は、仕事に置き換えれば、パフォーマンスが発揮される部分です。つまり、パフォーマンスを発揮するためには、心=感情と思考を自分自身で手懐けいていくことが大切だということです。今まで感情は、ビジネスではあまり重んじられてこなかった部分です。

「仕事をする上では、私情を挟むな」
「つべこべ言わず言われた通りにやれ」
「感情をコントロールできないなんて大人として未熟だ」

というような、コミュニケーションが長らく成り立ってきましたが、今や色んな意味でこのようなコミュニケーションはNGです。感情をコントロールすることは誰にもできません。感情をマネジメントすることはできますが、感情が現れないようにコントロールすることはできません。刺激があれば、感情は必ず現れるものです。なぜなら、それは、脳と体の自然な反応だからです。ですから、「感情をコントロールできないなんて大人として未熟だ」というのは、無理筋です。感情をコントロールできているように見えるのは、感情をコントロールできているふりをしている、ということでしょう。むしろ、感情が現れていることを認め、その感情に対してうまくアプローチすることを学ぶことが大切です。その鍵がEIとなります。

人的資本経営の視点に立てば、上司は部下の考え方を理解するだけでなく、感情に共感しながらコミュニケーションをすることが大切です。そして、上司が部下を管理するという従来の官僚的なマネジメント手法を見直し、上司と部下が互いの価値観や個性を理解、尊重し、共に学び高めあう関係を築いていくことが大切だと考えられます。このような関係性を築くことが、先ほど取り上げた「企業文化として定着」「環境」「社員エンゲージメント」につながっていきます。

(後編)コンテンツ

  • 文化、環境、エンゲージメントはいかにできるのか
  • いかに自己認識を深めるか
  • 自己認識ができると共感力が高まる
  • 自己表現できる心理的安全性を高める
  • まとめ

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