【コラム】〜コロナ対策〜 免疫とマインドフルネス 最終章

いよいよコロナ対策シリーズも最終章。これまで、体の免疫の仕組みの基本となる自己と非自己の識別による自己認識からヒントを得て、心の免疫力の高め方を考察してきた。最終章では、このCOVID-19の状況下で、私たちがどのような選択をしているか、もしくはこれからどのように選択をしていくかについて、考えてみたい。

3つの反応方法


外出自粛の状況下で、私たちの周りには様々な刺激がある。刺激に対して、どのような反応を選択していくかは、私たち次第である。コラム④で見たように、トイレットペーパーやマスクの買い占め行為や衝動買いは、刺激に対する反射的な反応の分かりやすい一例である。その他にも情報を鵜呑みにしたり、キレやすくなったり、無意識で私たちは様々な反応をしている。

コラム⑤で紹介したように、マインドフルネス瞑想は、刺激と反応の間に空間を作ることで、より冷静な判断をして、より賢い選択ができる心の免疫力を高める実践法である。ぜひ、読者の皆様には心の免疫力を高め、賢い選択ができるようになっていただきたい。

最終章では、この緊急事態の反応方法として3つの選択肢を提示する。「恐怖・錯乱」「学習・覚醒」「自律・共環(※)」である。

(※)共環は、マインドフルネスプロジェクトの造語である。互いの存在が世の中を循環させ共に生きていく意味である。

恐怖・錯乱


恐怖・錯乱の状態は、外からの刺激と内からの刺激に対して心の免疫力がほとんどない状態である。外出自粛という経験したことのない状況やテレワーク、学校休校、様々な情報などが外からの刺激となる。COVID-19の感染リスクにより、不安、悲しみ、恐怖、怒り、喪失感、孤独感など、様々な感情が生まれ、これらが内からの刺激となる。

恐怖・錯乱の状態では、この外からの刺激と内からの刺激によって、冷静な判断をすることが難しくなり、反射的に衝動的に反応してしまう。

(恐怖・錯乱状態の特徴的な反応)
・ 食品やトイレットペーパー、薬など必要以上のものを買う
・ 恐怖と怒りの感情を拡散する
・ 頻繁に不平不満を漏らす
・ 受け取った情報をすべて拡散する
・ 簡単にキレやすくなる

恐怖・錯乱の状態では、入ってくる情報を鵜呑みにして、その情報に基づいて行動したり、その情報を他人のためだと思い拡散してしまう。食品やトイレットペーパーやマスク、薬など必要以上のものを買ってしまう。


いつまで続くか分からない状況に不安を感じたり、自分や家族の感染リスクに恐怖を感じたり、不自由な状況に怒りを感じたりする。このようなネガティブな感情が生じることは自然である。大切なことは生じた感情としっかり向き合い、受け入れてやることだ。

しかし、恐怖・錯乱の状態では、これらの感情とうまく向き合うことができず、過剰に反応してしまい、周りに当たり散らしたり、簡単にキレやすくなってしまう。

感情との向き合い方が分からないと、感情のままに衝動的に反応してしまい、暴言を吐いたり、物を壊したり、最悪の場合は、家庭内暴力に発展してしまうこともある。また、無力感に覆われて、何もやる気が起きず、心の内に閉じこもって、誰とも連絡を取らずに時間だけが無為に過ぎていくように感じられることもあるだろう。


「恐れ」という感情があるなら、その「恐れ」の感情と向き合い、受け入れてやることができればよいが、「恐れ」と向き合うことを「恐れ」てしまうとその感情はコントロールが難しくなり強大な力を振るってしまう。

また、COVID-19の影響は、人間関係にも影響を及ぼす恐れがある。知らず知らずのうちに、不平不満を漏らすことが多くなり、交友関係や同僚とのコミュニケーションが険悪なものになってしまうこともある。普段の何気ない会話に対しても過剰に反応してしまうこともある。思慮の浅い発言や軽はずみな発言は慎むことが賢明であろう。

感情と向き合うように人ともしっかりと向き合い、このような時こそ、人とのつながりを大切にして、お互いサポートし合える関係作りをしたい。

学習・覚醒


学習・覚醒の状態は、心の免疫力があり、刺激に対して衝動的な反応ではなく、立ち止まり冷静に考えて反応することができる状態である。そして、新しい経験を通じて、学ぼうとする姿勢を示し、前向きに生きていくことを選ぶことができる。

今までとは違う。身体的な不自由な状況の中にも、自分にはできることがあることに気づければ、心にも空間が生まれ、冷静な判断の下、自分にできることにフォーカスすることができて、自分の行動をしっかりと選択することができるようになっていく。


(学習・覚醒状態の特徴的な反応)
・ コントロールできないことは諦める
・ 自分の感情を見極める
・ 状況を明確に把握しどのように行動するかを考える
・ 食事から情報まで自分を傷つけるものにお金と時間を使うのを強制的にやめる
・ 間違った情報を拡散する前に情報の信頼性を評価する
・ 誰もが最善を尽くそうとしていることを認識する


恐怖・錯乱状態との大きな違いは、現状から学ぼうとする姿勢が現れ、自分にできることに集中することができる点である。様々な刺激に対して、心の免疫力を効かせて、冷静に反応を選択することができる。自宅にいる時間が長くなったことを利用して、今までやっていなかった趣味などにチャレンジすることもできるだろう。

学習・覚醒の状態では、外出自粛という肉体的に不自由な状況においても、自分のコントロールの範囲をしっかり認識し、自分にできることとできないことを識別することができる。今まで当たり前にできていたことが、できなくなったことに固執することなく、素直に諦める。「あれもできない」「これもできない」と不平不満を並べたところで事態は快方には向かわない。むしろ、現状をありのままに認識し、自分にできることに集中することができれば、この状況下でも前向きに生きていくことが可能となる。

そのためには、コラム⑤で紹介した呼吸瞑想で、注意力のコントロールを鍛えることが効果的なアプローチである。まだ、取り組んでいない方は、ぜひ試してみてほしい。


今まで味わったことがない感情が現れてくるかもしれないが、それらの感情が、ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、心にしっかりと空間を作り、その感情を観察することで、どのような反応をするかを選択することができる。

前述したようにネガティブな感情は、生じることが自然である。大切なことは生じた感情としっかり向き合い、受け入れてやることだ。「恐れ」という感情があるなら、その「恐れ」の感情と向き合い、受け入れてやる。そうすることで「恐れ」と一定の距離を保ち、「恐れ」に縛られることはなくなる。

そのためには、コラム⑤でお伝えした観察瞑想やドラえもん瞑想が効果的なアプローチとなる。まだ、取り組んでいない方は、ぜひ試してみてほしい。

ストレスな状況で、酒やタバコで気分転換を図ったり、長時間TVやインターネットの情報に心を晒したり、外出せずに運動量が減少したり、自分を痛めつけるような行動をしてしまう人もいるかもしれない。

学習・覚醒状態であれば、このような行動を避け、むしろ在宅時間をうまく活用して、家族との会話や読書を楽しむことができる。また、ヨガやダンス、書道や花道、歌や楽器演奏など、過去にやっていた趣味を再開したり、新しい趣味を始めることもできる。


学習・覚醒状態であれば、現状が異常であることを認識し、何が起こっているのか、誰が関わっているのか、自分にはどのような影響があるのか、などの現状をしっかりと認識し、状況にふさわしい行動を選択することができる。

現状を認識することができれば、晒される情報の真偽を問うことができたり、辛い状況なのは自分だけではないことを理解することができる。誰がその情報を発信しているのか、どのような意図でその情報を発信しているのか、自分にとって本当に必要な情報か、有益な情報かを判断することができ、むやみやたらに情報を拡散することもなくなる。

辛いのが自分だけではなく、誰もが同じような気持ちでいることが理解できれば、人に優しく接することもできるようになり、今まで以上に親密な人間関係を築くことも可能だろう。

ただ、引きこもって鬱々とするのも、自ら行動を起こすのも自分次第である。状況はどこに行っても変わらない。だとしたら、今ある状況を受け入れて、そこから自分に何ができるか前向きに考える方が同じ時間を過ごすにも、有意義な時間を過ごすことができるだろう。

マインドフルネス瞑想で、刺激と反応の間に空間を作ることができれば、このような状況下でも自分らしく前向きに生きていくことが可能となる。1度ではその効果は現れないかもしれないが、実践を継続していくことで、自分の心の変化に気づけるようになるだろう。

自律・共環(※)


自律・共環状態では、学習・覚醒状態を経て、自分の状況をしっかりと認識することで、周囲の状況にも目配り、気配りができるようになる。このような苦しい状況の中で、自分が生きていることに感謝することができ、自分一人の力ではなく人とのつながりの中で、自分が生かされていることに気づくことができる。

今までのやり方が通用しないことに気づき、現状に適応し新しいやり方を模索して創造的な行動を選び、自分の力が及ぶ範囲で工夫しながら生きていくことができる。

(※)共環は、マインドフルネスプロジェクトの造語である。互いの存在が世の中を循環させ共に生きていく意味である。


(自律・共環状態の特徴的な反応)
・ 周りの人と彼らの行いに感謝する
・ 自分にも他人にも共感的になる
・ 他人に思いやりを持ち、いかに助けられるかを考える
・ 自分の能力を、必要な人のために使う
・ 静けさ、忍耐、人とのつながり、創造性を学び、実践する
・ 幸福感を抱き、希望の輪を広げる
・ 新しい変化に対応する方法を探す
・ 現在に生き、将来を見据える

今まで、当たり前のように食べれていた食事も、生産者がいて、流通業者がいて、お店に並び、場合によっては宅配業者が自宅まで届けてくれる。そのようなことに気づくことができると、1つ1つの食事に対しても自然と感謝の気持ちが生まれてくるだろう。

私たちの命は、自分の力だけで営まれているわけではない。このような状況下で、医療従事者たちが自らの命を危険にさらし、人の命を助けるために貢献してくれていることや、宅配業者がインターネットで購入した商品や家族からの贈り物を届けてくれること、食料品を売っている人たちがお店で働いてくれていることで、私たちの生活が支えられていることにも気づくことができるだろう。


自分よりも辛い状況の人もいるだろうし、惜しくも命を落とした方々もいる。そのことを考えれば、今、こうしてこのコラムを読むことができていることもありがたいことだと気づくことができるのではないだろうか。

困難な状況な者同士だからこそ、分かり合え、理解し合えることも多くある。他人に対して共感的になり、思いやりを持って接することができるようになる。テクノロジーを使って、オンライン飲み会やオンラインミーティングなど人と繋がれる喜びを改めて感じることもあるだろう。

場合によっては、他人にはできないけれど、自分にはできることを提供することもあるだろう。インターネットで得意分野のウェビナーを開催したり、SNSを通じて楽器演奏やダンスを披露したり、近所のお年寄りのために買い物に行ったりする人も多く見受けられる。

FacebookやYoutubeで音楽家が無料で自宅から演奏を配信していたのを拝見したが、素晴らしい取り組みだと感じられる。そのような活動を通じて、心の傷が癒える人も多いのではないだろうか。

誰もがサポートをすることができ、誰もがサポートを受けているような状態が生まれてくる。お互いの存在を認め合いながら、足りない部分を補い、協力しながら、共に生きる道を作ることができる。

肉体的には不自由かもしれないが現状を嘆くことなく、心は自由であることを思い出し、今できることにフォーカスすることができれば、人とのつながりを深めるとともに、今ある幸せに気づくことができるようになる。お互いがお互いの存在を認め、尊重し合いながら、共に生きる循環を生み出していくことで、明日への希望が生まれてくる。

まとめ

このシリーズコラムでは、

「不要不急の思考や感情に振り回されず、心の免疫力を高める」

ことをテーマに、体の免疫の仕組みを考察して、心の免疫力を高めるためのマインドフルネスの有効性を検証してきた。

コラム①では、COVID-19からの問題定義と現状を3つにステージ分けして認識した。



コラム②では、体の免疫の仕組みである自己と非自己の識別を考察した。


コラム③では、体の免疫と心の免疫の共通項である自己認識を見出し、マインドフルネスの基本的な考え方と認識の重要性を学んだ。



コラム④では、レンブラントの作品とヴィクトール・フランクルの考えを通じて、刺激と反応の間の空間の重要性について考察した。


コラム⑤では、ありのままに気づくために、マインドフルネス瞑想の具体的な実践法を紹介した。注意力のコントロールを鍛える呼吸瞑想と心の中を観察する観察瞑想・ドラえもん瞑想は、心の免疫力を鍛える効果的なアプローチである。


最終章では、現状に対する反応方法として3つの選択肢を提示した。どの選択肢を選ぶかは、すべて自分次第である。


COVID-19は、私たちに新しい価値観のもとで生きることを考えさせている。この変化を感じ取り、自粛期間中を活用し将来を見据えて今後の生き方をしっかりと考えることができれば、今まで以上に自分らしく生きていくこともできるかもしれない。この状況をうまく生かすも殺すも自分次第である。

恐怖・錯乱から、学習・覚醒へ。学習・覚醒から自律・共環へ。マインドフルネス瞑想の実践で選択の幅を広げられる。継続は力なりである。ぜひ、実践の継続をお勧めしたい。

このコラムを通じて、読者の皆様が、少しでも自分の心と体と向き合っていただく時間が取れたなら、コラムを書いている身としては大変嬉しく思う。読者の皆様には、ぜひとも懸命な選択をしていただきたい。そして、内なる智慧を分かち合い、共に新しい循環を生み出していきましょう。