【コラム】 〜コロナ対策〜 免疫とマインドフルネス ①

本日(2020年4月7日)、日本政府より緊急事態宣言が発令された。この状況下で、マインドフルネスができることは何かを数回のコラムに分けて考えてみたい。なお、本コラムでは、新型コロナウイルス感染症をCOVID-19と統一して表記する。

私たちに問いかけるCOVID-19

COVID-19には自己複製のための宿主を求めること以外の意図がある訳ではないことは承知で、COVID-19が現れた意味を考える。

・ 私たちは、根本的な価値観や生き方を見直す時期なのではないだろうか。

・ COVID-19は、私たちに今の時代をどう生きるかを考える時間を与えてくれているのではないだろうか。

・ COVID -19は、世界中に「ウイルスから人類を守る」という共通の問題をもたらし、グローバル化が進んだこの世の中をどのような価値観で生きていくのかを問いかけているのではないだろうか。

人間の智慧が試されているように感じられるのは私だけだろうか。

SDG’sやESG投資を通じて、危機感の醸成をしながら考え方を整理したり政策を検討していても、「総論賛成、各論反対」に近い状態で抜本的な動きになかなか繋がらないもどかしさを感じていた読者も多いのではないだろうか。



ところが、このCOVID-19の現象により、各国ではロックダウンという今までの議論の延長では実現し得なかったであろう強烈な施策を短期間のうちに決断、実行している。

今までは、問題の先送りでなんとか取り繕っていたのが、ウイルスという目に見えない刃物を喉元に突きつけられて初めて必要な行動をとる人間の愚かさと鈍さを露呈しているようにも感じられる。

緊急の度合いをどれだけ自分たちに惹きつけられるかが、人間の行動を決める一つの事例となった。今後のSDG’sの議論も関連当事者たちが「急を要する我が事」として受け止め、議論を深め実行策を考えていく姿勢が望まれる。

私は政治は門外漢であるが、欧米各国の政治的な動きを傍から見ていると、緊急事態においては、与野党の垣根を超えて、国難を乗り切るために大統領、首相のもとに一致団結して取り組んでいる姿勢が伺える。

一例に、イギリスのジョンソン首相が新型コロナウイルスによる症状が悪化したため集中治療室に入ったことを受け、英最大野党・労働党のスターマー新党首は「国中の国民の気持ちが、困難な時にある首相とその家族と共にある」とコメントしていることが報じられている。



心の免疫力を高める


このような状況下で、マインドフルネスは何ができるだろうか。

先に一言で申し上げれば、

「不要不急の思考や感情に振り回されず、心の免疫力を高める」

ことが大切である。



そのためには、自分の思考や感情が今どういう状況なのかをしっかり観察することが大切である。観察するためには、立ち止まる必要がある。ここにマインドフルネスが力になれる可能性が感じられる。

折しも、リモートワークや学校休校の流れの中で、私たちには今立ち止まる機会が与えられている。私たちは、この機会を活用するのか、ただ不安や恐怖に跪き心を閉ざし危機感に怯えながら過ごすのか、賢明な選択を迫られている。

また、識者たちの話を伺っていると、感染症は一度で一遍に収まることはなく、何回かの山を迎えながら、収まっていくようである。そのことを踏まえると、数ヶ月〜1年程度、もしかしたらそれ以上の中長期的な覚悟と備えをしておく必要があるように感じられる。

情報を選別しながら、不必要に不安や恐怖に駆られるのではなく、マインドフルに今をしっかりと生きることで、この難局を乗り越えていく心の姿勢を保っていきたい。

現状認識 〜3つのデミック〜

まずは、現状を認識する。

マインドフルネスプロジェクトでは、ウイルス発生から現段階までを「3つの”デミック”」として3つのステージに分けてみた。Stage1「パンデミック」、Stage2「インフォデミック」、Stage3「エクスペリデミック」である。現在はStage3「エクスペリデミック」の段階と考えている。エクスペリデミックは、マインドフルネスプロジェクトの造語である。(詳細は後述)



Stage1は、「パンデミック」である。COVID-19のウイルスが国境を超えて人から人へと感染し、世界中で大勢の人々に影響を及ぼすフェーズである。武漢の街が完全に封鎖されているニュースやYouTube動画を初めて見た時には、「対岸の火事」と考えていた方も多かったのではないだろうか。私自身そのように感じていた節があることを否定はできない。

世界保健機関(WHO)が、2020年3月11日にCOVID-19の流行を「パンデミックとみなせる」と発表した。その後、ヨーロッパ、アメリカへと広がり、次々とロックダウンの波が広がり、今、日本も緊急事態宣言の時を迎えている。

日経新聞の集計によれば、2020年4月7日現在、感染は世界182カ国に広がっている。累計感染者は世界全体で130万人を超え、死者は7万3000人を上回る。パンデミックの状況を踏まえると、グローバル化は「モノ」「カネ」「情報」の移動をもたらしただけではなく、改めて「ヒト」の移動をもたらしていたことを感じずにはいられない出来事となっている。

ダイヤモンドプリンセス号の受け入れ処置やヨーロッパの移民問題に見られるように、国が国民を守るための「閉鎖的な考え方」と情報開示や医療連携などの各国が協力して取り組む「協調的な考え方」のバランスが問われ、政治家や感染医療チームたちの舵取りが難しい状況が続いている。

このStage1では、「対岸の火事」から「明日は我が身」と少しづつ視点が切り替わり不安感が高まっていく人と、それでも「自分は大丈夫だろう」とタカをくくっている人とに分かれたように感じられる。また経済的な理由を優先し、行動を選択した企業や個人も多かったと思われる。政府の方針の曖昧さや具体的な政策が提示されない中で、国と国民の間に共通理解が生まれなかったのは、致し方ない反応であったと感じられる。実態が掴めない中で、得体の知れないものに対する不安感と政府による中途半端な行動の制限が主なストレスの原因となっていた。


Stage2は、「インフォデミック」である。パンデミックからの造語で、情報の感染という意味である。パンデミックの前後に様々な情報が錯綜した。今なお、玉石混合の情報が溢れ、どの情報に頼ればいいのか混乱をもたらしている。オイルショックの時を彷彿とさせるトイレットペーパーの買い占めがその顕著な一例だ。誰もが我が身が大事である。パニック買いしてしまった人たちを責めるつもりはない。また、COVID-19は、熱に弱く26-27度の温度で死ぬため、お湯をたくさん飲めば予防できる、という情報まで出回り、これを信じて実行した人もいたと聞く。

このStage 2では、パンデミックという現象の前に、冷静な判断力は失われ、情報の真偽を問うことなく、行動をしてしまう人が多くいる。情報化の利便性の裏返しで、次から次へと更新される情報に振り回され、コロナ疲れ、情報疲れで、疲労感も高まりストレスレベルも高まっていく。イタリアやニューヨークの状況に触れ、強い不安感や恐怖心を抱く人や、政府の対応にイライラするする人が多く見受けられる。ネガティブな感情が心を覆う時間が増えていく。

現状はStage 3 「エクスペリデミック」

Stage3は、エクスペリデミックである。エクスペリデミックは、マインドフルネスプロジェクトの造語であり、ウイルスや情報が感染していくように、経験(エクスペリエンス)が感染していくステージである。政府からの要請に基づいて、リモートワークや学校の休校などで、私たちの肉体的な自由が制限される中で、今までの生活が思い通りにできない不自由さを経験する。また、職場の同僚や家族知人が感染し、COVID-19に実体験として触れる段階である。

このStage3では、「向こう半年の仕事がキャンセルになった」「福利厚生の仕事でウイルス保因可能性の人たちの対応に追われている」「準備していなかったリモートワークの対応に追われている」「遠方に住んでいる家族に会いに行けない」「休校になった子供達の世話が大変」など、身を以て異常事態を痛感させられる出来事を経験する。

今やCOVID-19は「対岸の火事」などではなく、「隣の火事」となり、自分たちの感染リスクを心配する。場合によっては、自分が感染していることに気づかずに、他者に感染させてしまっているリスクを知り、自分の行為を顧みて自己嫌悪感を覚えた人も少なくないようである。

自分たちの行動が制限され、不慣れなライフスタイルに戸惑い、今まで当たり前にできていたことができなくなるフラストレーションが一気に高まる。「この先どうなるのか」という将来に対する不安感が高まり、心は落ち着かない状態になる。

今までの人と人との繋がりが消え、孤独感を味わう人も増える。ネガティブな感情が沸き起こり、ネガティブな思考が心を支配する。Stege3のストレスレベルは、今までの間接的なストレス要因に加え、肉体的制限による直接的なストレス要因が加わり、Stage1とStage2よりさらに高まっていると感じられる。

心のオーバーシュート


オーバーシュートは、何もウイルス感染だけの話ではない。情報への感染、経験への感染による、心のオーバーシュートが私たちの精神衛生を犯していく。これらの感染源を断つのは容易ではない。そのような中で、私たちはどのように心を調えていけば良いのだろうか。

「不要不急の思考や感情に振り回されず、心の免疫力を高める」ためにはどのようにしたら良いのだろうか。

まずは、立ち止まり、肉体的な不自由さの中であっても、心は自由であることを思い出したい。そして、健全なライフスタイルを確立していくための智慧をマインドフルネスの考え方の中に見出していきたい。

次回のコラムでは、「自己」と「非自己」という切り口で、「体の免疫」についての考察を通じて「心の免疫」について触れていく。